内容説明
声に出して読みたくなる、圧巻の大冒険!
吉田修一の新境地ともいえる本書は、誰かのために生きる時代を模索する今だからこそ蘇る、二十一世紀版山椒太夫。古典の名作『山椒太夫』をベースに、上古も今も末代も、慈悲の心の尊さとはいかに、を現代に問う問題作だ。
あの安寿と厨子王が千年の時空を超えて繰り広げる、善の執着と悪の執着を描く大冒険は、文字を追うごとに、思わず声に出して読みたくなる圧巻の言葉とリズムにあふれている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
352
吉田 修一は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者の古典懐古の新境地でしょうか、吉田 修一版『山椒大夫』、現代まで1000年も続く、物語だとは思いませんでした。ヒグチユウコの挿画もGOODです。2019/10/13
ウッディ
235
遠い昔に読んだ「山椒大夫」、親と引き離され、姉弟でひどい仕打ちを受ける安寿と頭獅王の姿に子供心に世の理不尽さと、恐怖を感じたことを憶えています。そんな内容を吉田さんがどんな風に書くのかと楽しみに手に取った一冊でした。古文風の文体に心配したものの、すらすらと読め、前半は記憶通り、ただ、意外とあっさりとした展開でした。途中から時空を超えたファンタジーになり、違和感が拭えず、原作の結末はどうだったのかというモヤモヤが残りました。なぜ吉田さんはこんな小説を書いたのだろう?そんな疑問が残りました。2020/01/29
yoshida
218
吉田修一さんの筆による「安寿と厨子王」、そして「山椒太夫」。展開の斬新さ。時代を時空を乗り越える様は、息を呑みつつも、散りばめられたユーモアにニヤリとさせられる。また、テンポの良さに一気に読了させられる。吉田修一さんの引き出しの多さに感嘆する。「国宝」のような大作も良いが、短編も良し。森鴎外による「山椒太夫」も読まねばいけないな。「安寿と厨子王」も読まないと。コンパクトながらも自由であり非常に楽しめた作品です。他の作品も読み続けたいです。装丁も実に良いですね。2019/12/02
旅するランナー
211
哀れなる姉弟、アンジュと頭獅王が受ける苦難の人生。おいたわしや。ちりりちりりと逃げ落ち、ゆらりゆらり時空を超えていく。振り落とされずに、しがみつこう。 ヒグチユウコさんによる挿画が、この本の魅力を高めています。2019/10/22
モルク
168
「安寿と厨子王」は両親から買ってもらった児童書の最初の一冊として思い入れのある作品である。当時、何度も何度も暗記するほど読み返した。それが吉田さんにかかると、時空を超え、ファンタジー仕立てになっていた。後半になると、七百年という時を飛び越え新宿にやって来る頭獅王。シルクドゥソレイユと人気を二分するサーカスで獣の世話をし、大獅子を乗りこなす。斬新な展開ではあるがちょっとぶっ飛び。でも、その文語のリズムが心地よく響く。ヒグチユウコさんの表紙が秀逸である。2019/12/03