内容説明
自衛隊と憲法の関係について関心が高まり、憲法改正に関する議論も活発になった。
しかしその内容は、理性的・合理的な議論とは程遠いものが多い。自衛隊違憲説に
長い歴史があるのと同様、自衛隊を現行憲法の枠内で説明しようとする政府解釈にも
精密な議論の積み重ねがある。改憲の是非を論じるためには、憲法の条文やこれまでの
議論を正しく理解することが必要だ。憲法と自衛隊の関係について適切に整理しつつ、
改憲をめぐる議論についてもポイントを解説。9条をはじめとする、
憲法改正の論点がスッキリと理解できる、全国民必携のハンドブック。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
34
報道ステーションでの解説は早口でわからなかったが、本だとわかる笑。憲法改正問題をどれだけの国民が理解しているのか。本書は入門書として最適です。自衛隊は9条2項が禁ずる軍隊ではなく、72条が規定する行政組織。国際法に基づき日本国は集団的自衛権を持つが、憲法は日本政府がそれを行使することを禁じている。最高裁は日米安保条約は合憲と認めたが、集団的自衛権を認めてはいない。安部政権は自衛隊の任務を曖昧にして改憲する作戦。2015年の仏のテロ時の緊急事態宣言は憲法に基づくものではなかったなど、色々と勉強になりました。2018/07/18
那由田 忠
21
自衛隊違憲論が多いと言われる憲法学者で、政府の9条解説をここまで丁寧にした人はいないのではないか。憲法全体に軍事的なことが何も書いていないので、自衛隊は普通の行政組織です。きわめて特殊な「軍事」組織なので、微妙な語句の使い分けがある。テロリストへの攻撃は武器の使用。自衛隊日報上の戦闘は、国家間の戦いでないので法律的に戦闘ではない。(ゴジラに対する武器使用は現行法でできないそうだ。)後方支援が武力行使と一体化しないかについて詳しいものの、もっと説明が必要だろう。でも、かなり詳しく説明された本と評価できる。2019/03/31
楽
18
18年初版。木村先生が丁寧に説明。それでもなかなか頭に入ってこないが、憲法の条文やこれまでの議論の積み重ねを理解せずして改憲の議論はできない。逆に言えば理解しない人々の発言が多いということ■憲法は軍隊を持つことを想定していないので文民統制の規定すらない■9条、自衛隊以外のテーマも取り上げる。緊急事態条項や教育無償化などは改憲せずとも法律で対応できることであり立法府の怠慢■改憲発議も安倍首相得意の「やるやる詐欺」か。消費増税凍結で参院選に打って出て、改憲勢力を維持して発議に持ち込めば憲政史上に名を残すかも2019/01/17
かんがく
13
憲法と自衛隊について基本的な法学的な理解と歴史から遡り、2015年の安保法制について解説。一般的にされがちな誤解を否定していくが、論調は攻撃的でなく、文章もかなり読みやすい。「武力行使」と「武器使用」など用語の違いや、憲法の「国民の生命や自由の保護」や「行政各部」などの9条以外の条文解釈などにも触れられており、法学的な視点からの理解が深まった。2021/01/17
なななな
10
タイムリーかつ分かりやすい1冊かと思われます。そういうことではないかと、みなさんなんとなく思っているとも思います。やっぱり勢いではなく、冷静な知識が必要ですね。2018/06/07