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内容説明
前方後円墳は日本列島独特の墳墓であるといわれてきた。築かれた地域は、ヤマト政権が支配する範囲とおおむね一致すると考えられてきたのに、なぜ、それらが朝鮮半島西南部の栄山江流域にまで広がっているのか。この地域はヤマト政権の支配下にあったのか。倭の一部だったのか……。朝鮮半島に残るすべての「異形」の前方後円墳を探訪。これまでの通説をめぐる現状と課題を見直し、永年問われ続けてきた古代史の深遠な謎に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
19
日本のネットでは政治的な扱いをされがちな朝鮮半島の前方後円墳に関する専論。その被葬者に関する研究史を敢えて後回しにするという構成からも窺われる通り、その位置づけを征服・被征服関係のようなわかりやすい話に落とし込んだものではない。冒頭で、朝鮮半島の前方後円墳が都出比呂志の「前方後円墳体制論」に疑問を突きつける存在であると位置づけているのがおもしろい。2019/10/15
月をみるもの
15
近いうちに、この本を携えて韓国に行き、古墳めぐり(前方後円墳以外も)をすることを決意した。倭国にとって、栄山江流域は百済という「異国」との最前線だったわけだが、茨城や栃木もまた、蝦夷という「異国」との境界だったのだ。そしてたぶん、栄山江流域からわたってきた人たちが倭国に製鉄・馬具・カマドといった技術革新をもたらした。2019/12/03
はちめ
9
朝鮮半島西南部に5世紀から6世紀にかけて一時的に出現する前方後円墳に関する最新の報告。様々な解釈があり得るが、強大な権力の空白地帯であった同地域における百済と倭との権力闘争の表れと言うのが最も自然な解釈ではないだろうか。したがってそこに埋葬されている人も多くは現地の権力者であり、倭との関係を重視する立場だったため、その事をアピールするために子孫らは前方後円墳を作った。しかし、ここにおける倭とは誰を指すのか。興味深い問題だ。☆☆☆☆2019/11/04
うしうし
8
韓国栄山江流域に偏在する14基の前方後円墳(5世紀末~6世紀前半)の様相が、非常によくわかる書籍。著者はこれらの「前方後円墳や倭系古墳の被葬者」を「現地集団の首長層」と解釈する。彼らは「百済への全面的な編入を是とせずに、(中略)みずからの経済的な既得権益や政治的な主体制をまもろうとした」ため、「前方後円墳や倭系古墳をきずく一連の活動を通して、(中略)倭とのつながりを百済にアピール」したが、6世紀中頃には「百済王権の傘下にはいり、その中でしだいに序列化されていった」(p252~259)と結論づける。2019/11/25
ジコボー
5
朝鮮半島で発見された前方後円墳、これが日本由来のものなのかどうなのか。固定観念を捨てて考えてみるという事は、この問題だけでなく全ての事柄についても非常に大切だと思います。人は自分の中で予め答えを決めていて、その答えを立証するための証拠ばかりを集めてしまうものなのだと思います。ニュートラルな状態に自分を置くというのは難しい事ではありますが、無心になって事実を集める著者に感銘を受けました。2019/12/22