内容説明
日露戦争後、帝国日本の鉄道は第一次世界大戦期の重工業化と国際化によって黄金時代を迎えた。後藤新平を総裁とする満鉄が設立され、シベリア経由「東京発パリ行き」の欧亜連絡列車の運行が始まる。さらに関東大震災以後の都市化の波は小林一三の阪急、五島慶太の東急などの私鉄を発展させた。大正天皇の大喪輸送とともに昭和の幕が開き、大恐慌を経て戦時動員へ。一九〇七年から四五年八月の敗戦に至る怒濤の四〇年を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
57
日本という国家が帝国主義的な膨張過程であるため、話題は国外にまでいく。満鉄の後藤新平がシベリア鉄道との連携によりユーラシア鉄道を構想していたのはやっぱりすごいな。今をときめく渋沢栄一がハワードの田園都市構想から田園調布開発に進むこともちゃんと出てるし。堤、五島といったデヴェロッパ―についても。関東大震災という惨禍、さらには戦争を迎えながら、あの8月15日の翌日ダイヤ通り国鉄は走っていたとか。社会史、科学技術史としても読める。ただ相変わらず数字の間違いが(グラフと文中の示す数字が一桁違ってるところあり)。2021/04/19
浅香山三郎
13
鉄道の国有化から私鉄の沿線開発、戦時の合併策迄を扱ふ。狭軌から広軌への改軌が検討されたにも関はらず実現しなかつたこと、満州からロシア(ソ連)を経て欧州に至る連絡ルートのこと等、戦前の日本の鉄道のあり得たかも知れぬ可能性についても示唆を得ることが多かつた。2017/12/24
かみかみ
4
日清・日露戦争や第一次世界大戦を経て日本が内外に地歩を固めたことを示す中、鉄道網は発達し人々の生活により身近なものになっていく。初詣もそうだが、鉄道会社が観光地の開発や商業施設の運営、住宅地の造成といった事業に多角的に取り組むことで人々の生活の基盤が作られていく過程が興味深い。自分の地元の都市計画にも触れられていて思わず目が惹かれた。2022/04/23
へ~ジック
4
大正時代から敗戦までを政治の動き、人の動き、技術の変化、戦争といった観点で概観する。前巻のような黎明期の面白さは無いものの、異世界が段々と知っている世界へ変化していくような不思議な気持ちになった。2019/05/26
アメヲトコ
4
日露戦争後から敗戦までの日本帝国の鉄道史。地方にも国鉄のネットワークが整備され、巨大都市周辺では郊外電車が開通し、植民地を通じて欧亜連絡がなる鉄道の黄金期。それにしても改良(広軌化)か建設かをめぐる後藤新平と原敬の路線対立のすえに後者が勝ち、スペックを抑えて地方にローカル線をどんどん作る方向性に進んでしまったのは、その後の国鉄の苦難の原点というべきでしょうか。2016/04/18