内容説明
過酷な冬を越すために人間が冬眠する世界での物語。
ふとした偶然からチャーリーは冬季取締官に志願する。
冬季取締官は眠らずに盗賊(ヴィラン)や冬の魔物(ウィンターフォルク)に対処する過酷な仕事だ。
無事取締官になったチャーリーは、冬眠に失敗しナイトウォーカーになった女性を別の地区まで送り届けることに。
ナイトウォーカーは普段はおとなしいが、
空腹になるとひとを襲うちょっぴり危険な存在だ。
途中で思わぬ事件に巻き込まれながらも、ようやく〈セクター12〉にたどり着いたチャーリーは、
夢の中の夏の楽園(サマートピア)で、美しいベルギッタと出逢うことになるのだった。
二度と還らぬあの夏の砂浜で。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シキモリ
23
冬の季節が長くなり、人々が【冬眠】する近未来、死と隣り合わせの見習い冬季取締官・チャーリーは冬眠薬【モルフェノックス】を巡る陰謀に巻き込まれていく―。英国発のエンタメSF冒険活劇で、設定の凄まじいディテールにユーモアとシニカルが溢れるハードボイルドチックな文体が少年心を躍らせる。上巻は特異な世界観を一巡し、役者が出揃うのに費やしているが、さてさて物語は下巻でどう展開するのか。しかし、この作風を青春ライトノベル調の邦題と装丁(原題は作中用語の「Early Riser」)に仕立てて販促するのは無理がある様な。2020/12/23
もち
17
「冬にヒーローはいないの。いるのは生き延びた幸運な者だけ」◆人々が冬眠し、極寒をやり過ごすウェールズ。記憶力を買われ、チャーリーは冬季取締官となった。強烈な個性を放つ同僚、現実に先行する夢、菫色の瞳をした女性。初めての越冬が始まる――■世界描写がいい。現実との相違点は、架空の引用資料により説明される。信念を砕く冬、超巨大企業の陰謀、章毎に驚きのあるプロット、命の奪い合い、ほのかな恋愛劇。一見、冷たい冒険譚の内側には、魅惑的な熱量が詰まっている。2020/02/12
medihen
13
ちょっとお洒落すぎかもしれないけど、上下巻並べると美しい表紙がうれしい。厳しい冬を乗り越えるために冬眠が必要な世界のウェールズで、冬季取締官(保安官みたいなもの?)見習いとなった主人公の冒険。陰鬱なはずの冬の情景とさまざまな悲劇が隣り合わせの世界にもかかわらず、登場人物全員が辛辣かつすっとぼけたユーモア・センスで主人公を煙に巻く、これぞ英国調といったムードが楽しい。「夢」をめぐる謎が大きくなりつつも、出会う人がみな主人公に警告を与えるとある人物の衝撃の正体が明らかになったところで下巻へ。2020/11/10
スターライト
13
気候の変動により厳しい冬を乗り越えるには人類が冬眠しなければならなくなった我々の世界とは異なった世界でのウェールズ。養老院から抜け出すために冬季取締官になった青年チャーリーの悪戦苦闘の日々を描く。取締官となった上司ローガンとコンビを組んで物語が一貫して進むかと思いきや、中盤あたりで意外な展開に。後半からは夢の話がからんできて、同じイギリスの作家クリストファー・プリーストの『ドリーム・マシン』が脳裏をよぎった(未読だけど)。いつ登場するのかと思っていたトッカータがラストに登場し、その正体にびっくり!下巻へ。2020/05/11
duzzmundo
12
内容とタイトル・装丁がぜんぜん合ってない、設定盛りだくさんのSF。最初から設定の説明がなく進み、いろいろ人が出てきて置いていかれそうになるも、それがいずれわかっていくのもSFの醍醐味かと。どうやらこの世界では人間に冬眠が必要らしい。冬眠に失敗するとゾンビ的なナイトウォーカーになるらしい。過酷な冬を取り締まる冬季取締官というのがいて、なかなか曲者が多いらしいーーという感じで物語は展開していきます。中盤くらいからぼんやり世界観が見えてきておもしろくなります。各キャラが好きになってきたので下巻に期待。2021/01/08