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内容説明
1915年公開の『國民の創生』を皮切りに、ハリウッド映画はアメリカ大統領を描き続けてきた。作中の大統領には人々の不満や希望が投影される一方、現実の政治はF・D・ローズヴェルトからケネディ、レーガンと時代が進むにつれ、ハリウッド流のイメージ戦略を活用していく。名画から日本未公開作品まで250本以上の映画をもとに、政治との相互作用を読み解き、トランプ大統領に翻弄されるアメリカの本質に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
67
アメリカ政治と映画との親和性を書いた本は初めて読んだように思う。とても興味深い視点であり、双方の狡猾さが見て取れる。比較文化論としては、終章に少し触れてあるだけなので、まだまだ研究の余地はある。日本でなぜ政治を題材とした映画が浸透しづらいのかということに思いを巡らせた。興行的に難しいのももちろん、政治そのものと首相という存在にアメリカのような絶対的な魅力がないからなのだろうけれど。2019/03/14
skunk_c
43
リンカーン以後のアメリカ近現代史を映画を切り口にさらっと論じていく感じ。映画と大統領の関係については、どちらもより多くの人に受け入れられなければならないという共通点があり、そのあたりでレーガンが面白い。ニクソンは味噌糞にされているけど実際の政治についてはもう少し評価されてもいいかなとも。映画の取り上げ方も上手いなぁと感心してしまった。ただ、「インディペンデンス・デイ」については物足りない。あの映画、ユダヤ、ブラック、ヒスパニックという民主党支持者と若い大統領をヒーローにしたクリントン応援映画なのよね。2019/03/08
ぐうぐう
31
アメリカ政治と映画、その相互作用の歴史を分析する『大統領とハリウッド』。映画の父と呼ばれるグリフィスの『國民の創生』にはリンカーンが登場し、映画黎明期からすでにアメリカは大統領を描いてきた。トーキーの誕生で雄弁に政治を語れるようになると、傾向はさらに強まる。その流れを知ると、ハリウッドが赤狩りの標的にされたのも理解できる。ハリウッドは、ケネディをヒーロー、ニクソンを悪役として描くが、ケネディは赤狩りを指示したマッカーシーと親しく、ニクソンは下院で赤狩りに関わっており、(つづく)2019/08/06
チャッピー
21
100年前の創生期から大統領や政治を映画テーマのひとつにしてきたハリウッド。有名無名のたくさんの映画、そしてその中で大統領がどう描かれているかを紹介。その時代を反映した人々の希望や批判がうかがわれる。リンカーンから始まりケネディ・レーガン・ブッシュ・オバマなどどの時代も興味深い。今のところまだトランプを主題にしたものは作られていないようだけど、いつか作られたらどんなのになるかな。そのまんまか。2019/03/14
みこ
20
実質アメリカの現近代史を綴った本である。かの国ではエンタメ化する政治の世界と時に国内外の政治に翻弄され、時に風刺化する映画界が交錯しあう。だから、本書のように映画の歴史を綴れば、同時に近現代史が見えてくる。しかし、その中でも最もエンタメ的な大統領が登場してしまった今、リアルの彼を見ているだけで十分面白い状況になってしまい、映画の中のいかなる大統領も霞んでしまうというのは痛烈な皮肉である。2019/04/14