創元推理文庫<br> クロイドン発12時30分

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創元推理文庫
クロイドン発12時30分

  • ISBN:9784488106348

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内容説明

チャールズは切羽詰まっていた。父から受け継いだ会社は不況のあおりで左前、恋しいユナは落ちぶれた男の許へ来てはくれまい。母の弟アンドルーに援助を乞うも、駄目な甥の烙印を押されるばかり。チャールズは考えた。叔父の命か、自分と従業員全員の命か。これは「無用な一つの命」対「有用な多くの命」の問題だ。我が身の安全を図りつつ遺産を受け取るには――念入りに計画を立て、実行に移すチャールズ。快哉を叫んだのも束の間、フレンチ警部という名の暗雲が漂い始める。計画はどこから破綻したのか。『樽』と並ぶクロフツの代表作、新訳決定版。/解説=神命明

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Kircheis

136
★★★★★ 倒叙ミステリの面白さを詰め込んだ傑作。 個人的には『樽』よりこちらがクロフツの代表作だと思っている。 犯人が凶悪な人間ではなく、小市民的な感覚の持ち主なのがミソ。完全犯罪を成し遂げようと計画する人間の心理描写が細かく描かれていてリアリティ抜群だ。 倒叙でもクロフツらしい地道な捜査は踏襲されている。更に逮捕後の法廷シーンがまた出色の出来栄えで、検察側と弁護側の弁論の応酬が(やや弁護側に物足りなさはあれど)実に素晴らしい。 そしてラストのフレンチの絵解きがクライマックスを彩る。最高である。2019/12/03

ケイ

135
なんと、書かれたのは1930年代。確かに、殺しの動機につながる企業の苦境は世界大恐慌後の事だが、現代のバブル後やリーマンショック後にも置き換えられそう。検死も本格的だし、違うのはDNA鑑定や携帯電話を持っていないくらいに感じる。さて、内容はといえば、コロンボシリーズのように犯人も動機も分かっている。それをやり通せるのかどうか、だ。やり手の警察側が追い詰めていく話は面白いが、最終章は些かハナについたかな。2019/05/30

森オサム

68
倒叙ミステリーの古典、1934年の作品。まずまず面白かった。犯人が犯行を決意して実行するまでを丹念に描き、完全犯罪が成功したかに思われる。その後警察側の地道な捜査が見られるか?、と思いきや、突然の逮捕!、そして場面は法廷へと移っていく。これはかなり意外な構成で、フレンチ警部の推理は、最終章にまとめて披露される事になります。倒叙物は、犯人が徐々に追い詰められていくスリルが魅力ですが、本作は犯人側の心理の動き、法廷場面の緊張感に読み応えが有った。いつの時代も、動機は金と女。しかしなんでこんな女に、哀れな男…。2020/07/10

星落秋風五丈原

48
「モーリーは初めて飛行機に乗った。父と祖父、祖父のお世話係が一緒だ。パリで交通事故に遭った母の許へ急ぐ旅であることも一時忘れるくらいわくわくする。あれ、お祖父ちゃんたら寝ちゃってる。―いや、祖父アンドルー・クラウザーはこときれていた。自然死ではなく、チャールズ・スウィンバーンに殺されたのである」えっ何ですかそのノリは。孫娘が祖父の第一発見者で、後ろの説明で犯人まで明かしてしまっていいの?  いいんです。いわゆる本作は倒叙方式。最初から犯人がわかっている刑事コロンボスタイルなのです。2021/05/03

たぬ

39
☆4.5 これは確かに名作!(それでも5点満点にはしない厳しい私) 従弟に危険が及ぶのは避けたいどうしようどうすればいいんだとぶちぶち悩んだり老い先短い年寄りだし殺そう多数の犠牲より一人の犠牲だとクズすぎる結論を出したりヤベェでっかい音立てちゃったよと心臓バクバクさせたり、犯人の細かな心理描写が実に面白い。手間暇かけていろんなアリバイを仕込んだけどフレンチ警部のほうが一枚も二枚も上手だったね。2022/10/14

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