内容説明
東日本大震災によって、福島原発4基すべてが爆発し、日本は混沌としていた。たった一人で放射能被害の警戒区域で発見された少女バラカは、豊田老人に保護された。幼くして被曝した彼女は、反原発・推進両派の異常な熱を帯びた争いに巻き込まれ―。全ての災厄を招くような川島に追われながらも、震災後の日本を生き抜いてゆく。狂気が狂気を呼ぶ究極のディストピア小説、ついに文庫化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
406
下巻に入って一気にディストピア小説の様相を呈してくる。これは、震災後にありえたかもしれないパラレルなSF世界なのか、それとも物語的な粉飾を施した現実世界のパロディなのだろうか。そこは、震災の被害を隠蔽し、来るべきオリンピックに狂奔する世界なのである。小説としてのリアリティには無理も感じなくはないが、それでもこれはまぎれもなく桐野夏生の描く世界だ。ページ数が少なくなっても結末が見えてこない。読者に与える焦燥感こそが彼女の真骨頂である。だから、エピローグの甘さは許そうと思う。2019/11/18
キムチ
88
惰性的にこの国で生きているせいか3・11以来都合の悪いモノは皆 検閲を通過してしか目に触れない様な国と指摘されると~うそ寒い。上下の厚みは特急読書。面白いというより驚嘆。人物名で語るとネタバレになる・・あの2人の男はラストで隣人 顔を突き合わせ、死に立ち会う。震災の大波に人生を呑まれた人々の群れは阿修羅の様で生と死があたかもアイコンの様に行間に浮かんでいる作品だった。つまりは狂言回しに過ぎなかった2人のバリバリガールの痛い末路。人生の縮図を多く咀嚼した時の流れ・・バラカは身2つになり歩みを続けているんだぁ2022/11/10
アッシュ姉
77
自然による災害も人間の悪意も桐野さんの手にかかると容赦がない。こんな暗黒社会日本は恐ろしすぎる。バラカを守る真っ当な大人はほんの一握り。さまざまな思惑からバラカを利用しようと狙う大人たちの魔の手から逃げ出すことはできるのか。後半失速気味で最後は駆け足だったのは頁数の都合だろうか。あれの最期はあっけなく、あの人との再会は叶わなかったが、問題を抱えた人だったから良かったように思う。誰より大切な人とは再会できたのだから。2022/08/29
納間田 圭
74
警告的な一冊。3.11の直後に8年経過した時を想像した"もう一つの日本"。福島原発の四基全てメルトダウンした設定で被害は僕らが知る災害の数十倍。避難区域は東日本全域に及び…当然東京も避難勧告地域に指定されゴースト化。首都は大阪に移り、天皇も京都御所に引越。主だった会社や大学も西日本に移転し…海外企業も国外に逃げた。2020年のオリンピックは大阪開催予定だ。主人公の薔薇香は…10歳の小学四年になった。彼女の震災履歴の全ては…鬼畜義父K島と放射能の恐怖から逃げるため。7歳の時に甲状腺癌が発症して手術をしていた2019/03/11
カブ
52
東日本大震災で福島の原発で大きな爆発があり、日本の東側は放射能の警戒区域となってしまい、首都は大阪へ。復興という名の元に国家規模のイベントの影で、被曝したバラカという少女を通して人種差別、人身売買、宗教を描く。彼女の周りに起こる出来事が悲惨過ぎて、誰を信じていいのかわからなくなる。最後、ちょっとだけ希望を持たせてくれたのがよかった。2019/06/08
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