内容説明
雨の大学教室で、学生たちにまぎれこんだ謎の人物「X」を捜す推理合戦のスリリングな顛末を描いた「見えないX」、台湾推理作家協会賞最終候補となった手に汗握るサスペンス「藍を見つめる藍」など17の傑作ミステリ短篇を収録。陳浩基デビュー10周年記念作品
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
374
『13.67』とはまた赴きの違う短編集。SF設定や諧謔的なオチは、星新一や『世にも奇妙な物語』を連想させる。マイベストは『時は金なり』。もっとガチガチな本格作家なのかと思っていたので、今作品でかなり印象が変わった。最後の作品では、前作の片鱗ともいうべき論理のこねくりが見られるが、全体としてはミステリという印象は薄く、犯罪を題材にしたSFショートショート集といった感じ。自薦短編集らしいので、コレが最高級で、今後の短編は一気にクオリティダウンする可能性もあるかもしれないから、次で良い裏切りを期待する。2020/01/16
🐾Yoko Omoto🐾
155
ミステリとSFをメインに、SSと短編から成る17の物語は、最高に好みで超絶に面白かった。全編に渡り、物語の構図は無駄が無く実にシャープで、期待を裏切らぬ着地点の意外さには瞠目するばかり。全て良かった中で敢えてベストを選ぶなら、レトリックの秀逸さに悶絶させられた「藍を見つめる藍」、フーダニットを逆手に取りフェアネスの可能性を探った究極のパズラー「見えないX」、発想の妙に唸りっぱなしの「時は金なり」「霊視」。あとがきに見る本書への拘りポイントから著者のミステリ愛に至るまで、全てに満足の本当にデリシャスな一冊。2019/06/09
遥かなる想い
154
2020年このミス海外第5位。 香港の作家による 華文ミステリー短編集である。タイトルはギリシャの哲学者の精神に倣ったものらしいが、奇想天外な発想から 生み出される展開が 面白い。 題材も ネットの恐怖から、大学講義ものまで 幅広く、結末も 素直ではない…洗練された短編集だった。2019/12/25
ケイ
147
『13.67』の著書の作家生活10周年に刊行された短編集。1つ目の『藍を見つめる藍』にはしてやられた。さすがだと思いながら読んだ2つ目の『サンタクロース殺し』も堪能。しかし、その後は気味悪さが先にたって楽しむまでにいたらず。イヤミス的な毒が強すぎたかな。最後の短編はかなり良く、気分を盛り返すも、この作家さんには長編を読ませて欲しいなと思った。2019/06/04
とん大西
134
面白い!幕の内弁当のように(←例えが野暮ったくてスマン)色んなオカズが詰まった短編ミステリーに舌鼓。『世にも奇妙な物語』や『藤子・F・不二雄異色SF短編集』の世界観を彷彿とさせる読み応えと鮮やかなオチに大満足。お気に入りはトリックが絶妙な「藍を見つめる藍」や「見えないX」。SFのジャンルでは「時は金なり」や「カーラ星第九号事件」なんかは皮肉も効いていてジワリます。2021/01/09