内容説明
「新しい女」「恋愛の天才」「野狐さん」と散々に評される伊藤野枝。28年の生涯に、三度結婚し、七子をもうけ、雑誌を編み、みずからも論じ翻訳して全集四巻の文章をのこした。三十路の物憂さ、大杉家の長男の嫁としての気配りなど、全62通の手紙からは、いきいきした野枝の話し声が聞こえる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきこ
1
伊藤野枝については色々と読んでみた。いずれもその強さ、情熱が印象的であった。本書は二部になっていて、最初は甘粕に殺される直前までの大杉との書簡など、二部目は大杉に至るまでの少女時代からの野枝の手紙だ。時代を追いたかったので二部から読む。女性らしくてやわらかな文章だ。当時としては大胆なのだろうか。理路整然としていて切れがあり好ましく感じる。彼女の優しさ、当時の女性としての生き苦しさもにじませている。後半の大杉への書簡はただもう恋に落ちている、というものだ。なぜ殺されなくてはならなかったのか。残念である。2021/06/18