内容説明
「薬屋のひとりごと」の日向夏の待望の新作。
未来世界で第2の人生を送る少年とその世話をする少女を通じて理想と現実、存在価値が描かれる。
目が覚めると新世界にいた。
巨大な木の中で眠り続けていた紫郎は、目の前にいた空色の髪の少女から
前時代の生き残りであることを知らされる。
核兵器も、地球温暖化も、エネルギー問題もなくなったそこは、
波動係数収束管理システム、通称世界樹によって支配された未来だった。
そこには人間のほかに、それに従属するために生まれた生体型人造人間もいた。
困惑しながらも常識の通じない未来世界を理解し、順応していこうとする紫郎。
眠る前の記憶もまた、その生活は緩やかで安寧で退屈な毎日の中で過去のものとなっていく。
その矛盾に気づかぬままに-----。
「薬屋のひとりごと」の日向夏の待望の新作は近未来ファンタジー。
理想と現実、そして己の存在価値が炙りだされていく。
日向夏(ひゅうがなつ): 福岡県在住。「薬屋のひとりごと」でデビュー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
昼沢異世界
20
★★★☆☆ 踏み抜いた地雷が起爆しないどころか実は財宝で、といった印象…。ファンタジーと違ってSFというジャンルは、冲方丁や秋山瑞人などを筆頭に、よほどの実力(筆力)とSFに対する予備知識を備えていない限りラノベという枠組みの中に物語を構成することは難しいと個人的には考えているのだけれど、これはこれは、SFとしての体裁を申し分なく保てているではないか…! ものの見事に終始読みふけってしまった。中でも、読みやすさというラノベの長所で、小難しさというSFの短所を打消しにできていた部分などを評価したい。2013/11/16
Yobata
19
紫郎は目が覚めると300年以上の未来にいた。コールドスリープで寝ていたらしく、この新世界はバイオロイドという生体人造人間達がユグドラという世界樹によって生きる理想的な近未来の世界で、紫郎はなんと都市一つの管理者だという。現代理のエキドナとの会合などを終えるも理想的な都市の中に違和感を感じ…。やはり近未来になっても階級差別ってのは無くならないんだよね…まぁロボットや人造人間などの技術進歩によって人間に従う生命体が生まれるんだからそういう意識も生まれるのもわからなくもないが…。バイオロイドを忌避していて、→2014/10/06
シンヤ
12
いい塩梅のバランス感が出ていて面白い。オールドタイプの直球なSFテイストな作品でありながら、登場人物の魅力もラノベらしくよく引き出していたかなと思います。やや掘り下げが甘い部分と定型さはありますが、ストーリーに対する登場人物の配置はよく出来ているかなと。世界観・設定の出し方もいい感じで面白いです、もう少し長編でディテールを見てみたい気もします。余韻や解釈が広がりそうな纏め方がいい感じですね。設定や人物造形の土台がしっかりと練られていて、SFとラノベらしさが綺麗に合わさった良作(前者強め)かなと思います。2013/09/15
まりも
12
これは結構面白い。主人公は350年後の世界で目覚め神託者として祭り上げられる。ヒーロー文庫にしては珍しい懐かしい感じのするSF作品でした。話の展開、キャラの配置も見事でこれで終わらせてもいいけどシリーズ化するとさらに世界を広げれそうな感じがして面白いですね。小説家になろうの作品をそのまま文庫化させるのではなくこういったテイストの作品を出してくれるというのはうれしい。2013/09/05
accept
8
目が覚めたら350年後の未来だった……、ベタ故に好きです、こんなSF。古典的な設定に今時なラノベキャラクターが程よい新鮮味を与えてくれる。世界観の作り込みも良く、続編があるなら読みたいと思わせる魅力のある作品でした。ただ、所々テンポが悪く、多少のかったるさを感じるのはマイナスポイントか。2013/10/04