内容説明
「大阪維新」の政治について,有権者の維新への支持態度を実証的に分析することによって明らかにする。サーベイ実験などの手法を用いて,維新に扇動された有権者といったポピュリズム論を反証する。また有権者の批判的志向性を見出し,民主主義の可能性を探る。
目次
序 章 課題としての維新支持研究
第1部 問いと仮説
第1章 維新をめぐる2つの謎
第2章 維新政治のパズルを解く
第2部 維新支持と投票行動
第3章 維新支持とポピュリズム
第4章 なぜ維新は支持されるのか:維新RFSEによる検証
第5章 維新ラベルと投票選択:コンジョイント実験による検証
第3部 特別区設置住民投票
第6章 都構想知識の分析
第7章 投票用紙は投票行動を変えるのか:投票用紙フレーミング実験による検証
第8章 特別区設置住民投票下の投票行動
終 章 我々は民主主義を信頼できるのか
補論A 批判的志向性は反対を促すか:サーベイ実験による検証
補論B 都民ファーストの躍進とポピュリズム
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Michio Arai
7
維新の会は稀代のポピュリスト橋下に率いられた情弱B層を支持基盤とした地域政党などではない。もしそうなら、橋下が引退した後も続く維新の強さ、大阪以外での維新の弱さ、大阪市廃止・特別区設置の住民投票での敗北を説明できない、とする。 善教准教授は実証分析により、一面的な見方に固執しない、批判的な指向性を有し、態度変容を生じやすい維新支持者像を描き、だからこそ住民投票告示日から投票日までの間、徐々に情報が出揃うに従い賛成から反対に動いたのだとする。意外な結論付けだったが、調査分析の仕方は非常に興味深かった。2021/01/06
tenorsox
3
維新は何故選挙で強いのか&強いはずの維新が都構想の住民投票で何故敗れたかついて。前者についてはポピュリズムの一言で片付けられがちだが、「大阪の利益の代表者」を住民が合理的に選んだ結果であること、後者についても巷で云われるようなシルバーエコノミクス、南北格差、橋下氏の人気低下が要因ではなく、十分な情報を提供された住民が合理的&慎重な判断を下した結果であることを、様々な実験を通じて明らかにしている。 結果についてと、アンケート調査の工夫と組み合わせでこんな風に定量的に実証できるんだっていうのと二重の驚き。2019/04/05
たろーたん
2
2012年、2014年、2017年の全国における相対評価を見ると、徐々に維新への投票率は下がってきている。また、全国区においては、維新が特段強いという訳ではない。維新が強いのは大阪だけだ。しかし、それなのに維新が掲げる特別区の住民投票は僅差ながら反対された。この本の問いは二つで、①「なぜ維新は大阪で強いのか?」と、②「大阪で強いのに、なぜ特別区は否決されたのか」である。(続)2024/08/29
とりもり
2
維新人気を単なるポピュリズムや橋下人気といった印象論で語るのではなく、アンケート調査をベースにした実証分析によって明らかにしていく。大阪の利益代弁者としての地域政党であることがその源泉(故に全国政党にはなり得ない)であり、その結果として一定の議席数を確保したことがそれを確固たるものにした。にもかかわらず都構想の住民投票が否決されたのは、維新支持者の批判的志向性が背景にある、というのが本書の主張。前者は説得力があったが、後者はやや弱い。何れにせよ、ポピュリズムとは何かを考えさせられる良書かと。★★★★★2021/03/23
まさきち
2
大阪にせよ東京にせよ、風が吹いたように首長や議員を選んでいく市民をポピュリズムという名で浅く理解し貶めてきたのは私も同じ。果たして?と言うところを丁寧に調査・解析して展開している。細かい調査方法の是非や視点はなかなか指摘できる点も浮かばないけど、丁寧にじっくり取り組んで展開されたのではないかと素人目には思った。2020/05/01
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