内容説明
天文九年の師走。毛利元就の居城、安芸国(現広島県)の郡山城に尼子軍が攻め寄せようとした時、一万の援軍が颯爽と現れた。まだ二十歳の美しき軍師の名は、陶隆房(晴賢)。毛利家を従える大内義隆の重臣にして、援軍の大将を務める男だった。見事な戦略により尼子軍を打ち破った隆房は、毛利元就の盟友として、親交を深めていく。だが、隆房の敵は、外部だけではなかった。下克上の悪名を背負った武将の
儚き半生を描く、長篇歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本
116
大寧寺の変と厳島の戦いで悪名を残した陶晴賢が主人公。大内家筆頭家老として活躍するシーンから始まり、敗戦からの派閥争いがあり、大寧寺の変から続く誤った判断があり、厳島の戦いで終わる。大内家を書いた小説は初めてで殆ど知らない人物ばかりだったが、普通に楽しめた。大内家を捨てきれず大名になれなかった晴賢が大名となった毛利元就に討たれるのは戦国時代だなと思う。解説に記載のある他の小説も読んでみよう。2019/07/23
k5
58
下剋上の代表例として習ったものの、実際にはどういう人だかわからない陶晴賢が主人公。なるほど陶晴賢がどういう人かはよく分かりましたが、それ以上ではなかったかも。毛利元就視点が出ちゃうのがネタバレっぽい感じで、サスペンスにかけるのです。2022/03/27
みこ
22
陶晴賢。一度この人物を主人公にした小説を読んでみたいと思っていたところだった。家が大事か主君が大事かの狭間で揺れ、そして滅んでゆく。歴史は敗者には残酷ゆえ彼の忠義にスポットライトが当たることは殆どなかった。大内家の凋落から厳島での敗北までを晴賢自身の目線でグイグイと読ませてくれる。主人公らしく知勇兼備の猛将として登場し、敗れるとはいえ最後まで元就との謀略合戦を互角に演じ切る。敗れた原因が元就のようにブラックになり切れず主君への愛を残しグレーのまま突き進んでいってしまったという点がまた切ない。2019/06/25
jin
10
陶晴賢の一生を題材にした小説。 敬愛していた主君が汚名を残さない為に謀反を起こして自分が悪名を被るという、一見矛盾した動機にも見えるがそこに至るまでの過程を通じて陶晴賢を作者独自の解釈で描いている。また当時の領国経営の実態や家臣団との派閥争いなど合戦以外にも見所が多い。毛利元就との関係が変化していく様は時代の流れに適応する者とそうでない者の比較となっていてわかりやすい。2021/11/08
鵺
6
大内義隆を下克上で除いた武将、陶晴賢を描く歴史小説。司馬遼太郎の小説で「奸物というのは、人柄の善悪ではなく、無能にして権力をにぎって将士を生死させる存在をそう定義する」とあるが陶晴賢にとって大内義隆の存在はそのようなものになってしまった。しかしそれでも大内家への忠誠心を捨てきれず悪名を背負いきれなかった事が彼の滅亡に繋がってしまったという感じであった。2020/07/26