内容説明
通夜が奇跡の一夜に。芥川賞受賞作
ある秋の日、大往生を遂げた男の通夜に親戚たちが集った。
子、孫、ひ孫三十人あまり。
縁者同士の一夜の何気ないふるまいが、死と生をめぐる一人一人の思考と記憶を呼び起こし、
重なり合う生の断片の中から、永遠の時間が現出する。
「傑作」と評された第154回芥川賞受賞作に、単行本未収録作「夜曲」を加える。
解説・津村記久子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
68
冒頭からしばらくはたゆたう視点に翻弄されたが、流れは急速に収斂され、ひとつの大きな物語となってゆく。日本の「家」制度を超えた、死とは、時間とは、そして人生そのものとは何かという大きな主題を自然に考えさせられる読後感を得られた。登場人物に年少者が多いため、若い世代におすすめできる作品。2019/04/12
はっせー
53
死について考えたい人におすすめの本になっている!滝口さんの作品を久しぶりに読みたいと思い手にしてみた。今までにない構想の本のため終始面白かった!舞台はある男の通夜。その通夜に集まる子や孫やひ孫といった親族たち。その親族たちを神の視点で描いた本。こういった親族たちが集まった場所では決まりきった会話が繰り広げられる。何歳になったのか。結婚したのか。あの人はだれの息子さんだっけ?などなど。同じような会話だがどこか毎回違う。そんな即興性もある雰囲気を的確に捉えられている作品であった!2024/05/17
いっち
49
死んでいなくなった男の通夜に、親戚が集まる。親戚の分け方に、まともな奴、まともでない奴があるという。まともな奴は通夜に来て、酒を飲んでは近況を報告する。まともでない奴は、通夜に来ない。本作は、まともでない奴が魅力的。例えば、故人(祖父)の家のプレハブに住む青年(孫)。生前、祖父と食事をとっていたが、通夜には行かず、プレハブにいる。青年は一人静かに弔う。解説の津村記久子さんは、青年の弔い方を「水槽の水を浄化するために置かれている石のような静かな価値」と言う。そんな青年を、一体誰がまともでない奴と言えるのか。2021/05/22
ましゃ
47
本書の『死んでいない者』とは、通夜に参加する故人以外の者達。人は死を思う時、自分の生を振り返る。親戚でも顔は知っているけど名前が分からなかったり、顔は思い出せないけどなんとなく名前だけは覚えている、そういった深い関係に無い親戚の通夜独特の不思議な一体感が本書には描かれている。大往生を遂げた男の通夜のため、子、孫、ひ孫ととにかく登場人物が多い。世代によって通夜の見方や感じ方は違うが、親戚一同が死んでいる者を思う特別な一日であり、死んでいない者同士がお互いを思い合う日でもあるのだ、と私は本書から感じました。2019/04/10
yumiha
45
友人Yちゃんから「面白くない本」としていただいた。葬儀にしろ法事にしろ年賀状程度のつき合いしかない親戚たちと久しぶりに顔を突き合わす。どなたさんでしたかいのうと思う方もおられるすることも💦故人の子5人、孫10人、ひ孫3人。誰が誰だかわからなくなるので、家系図を書きながら読み進めた。その中には、いわゆる世間と折り合いの悪い者も混じるが、その者たちこそ作者の狙いか?「空にのぼれない者は、こうして横たわるしかない」と川に身を預ける場面が印象的だった。2020/04/28
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