文春文庫<br> 冬の光

個数:1
紙書籍版価格
¥1,012
  • 電子書籍
  • Reader

文春文庫
冬の光

  • 著者名:篠田節子【著】
  • 価格 ¥968(本体¥880)
  • 文藝春秋(2019/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167912376

ファイル: /

内容説明

四国遍路の帰路、冬の海に消えた父。
家族、男女関係の先に横たわる人間存在の危うさを炙り出した傑作長編。

企業戦士だけれど、子煩悩だった父。だが父は、二十年間ひとりの女性を愛し続けていた。
一度は夫の裏切りを許し、専業主婦として家庭を支えて生きてきた母は、父の退職後に発覚した事実に打ちのめされる。

それなりに安定した幸せな家庭を作ってくれた父が、四国の遍路を終えた時、冬の海に飛び込んだのは何故なのか。
家庭の外にもう一つの世界を持っていたその心中とは?
次女の碧は職場に休暇願いを出し、父の最後の旅を辿ろうと決めた。

日本の標準的で幸せな一人の企業戦士の、切なく普遍的な人間心理。
四国遍路のリアルな光景を辿るうち、読者も自身の人生、男と女の根源的関係に思いを馳せることになるに違いない。
変容し続ける作家・篠田節子の到達点。

解説・八重樫克彦

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

452
これまでの篠田節子とはかなり違った印象だ。けっして悪い意味ではないけれど、作家も年をとったかと思う。かつての直木賞作『女たちのジハード』の若さゆえのもどかしさはここにはない。若き日を経過し、壮年期も経て、初老の域にさしかかろうとする男女を描く。様々な意味で人生の終焉を前にした寂寥感に溢れる小説だ。こんな作品を書くようになった篠田節子にあらためて感無量の思いを抱く。康宏と紘子の青春の光芒が、自身のその時代と重なるからでもある。私たちにとって、その終わりはどんな形をとりうるのだろう。それが篠田節子の問いだ。2019/09/06

あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...

143
高く評価している方を何人かお見受けしたが、なるほど納得!自分もこの手の作風はドンピシャで、今年のトップ10入りを検討中~♪バブルの頃、家庭を顧みることもなく、それが当たり前と仕事に邁進した一人の男。四国遍路を終え、東京へ向かうフェリーから冬の海へ消えたところから物語は始まる。確かに家族からすれば善き夫、父親とは言えなかったのかもしれない。決して立派とは言えず、赦されざるべきなのかもしれないが、自分にはそこに等身大の男の生きざまを見たような気がしてならない。家族への想いに満ちた冬の光が切なく尾を引く。2020/12/23

ふじさん

99
四国遍路を終えて帰路、海に消えた父。彼には、高度成長期の企業戦士として、専業主婦の妻に支えられた家庭人としての顔と40年に及ぶ恋人・笹岡紘子との許されぬ関係があった。四国で父の巡礼の足跡を辿った次女・碧は、父親をある事実を知る。夫婦、親子、男女関係の先にある人間関係の危うさや脆さを様々な視点から描かれた作品。長い人生を生きて来た者に様々な思いを抱かせる、考えさせられる傑作。最後に、次女・碧によって、父親の死んだ真相が明らかになり、少し心が楽になった。 2022/03/08

まこみん

94
62歳の康宏は四国遍路の帰途フェリーから海に消えた。次女の碧は、家族を欺いて愛人と関わり続けていたという父の痕跡を辿っていく。妻の立場では許しがたい長年に渡る裏切りなのだけど、康宏にとっては今の家族があってこそで、純粋過ぎて年取っても寛容さが育まれなかった紘子とはたとえ結婚しても上手くはいかなかっただろう。東日本大震災の中ボランティアをやり抜き帰宅した康宏は後の人生に虚無感を抱く。読む読者の年代、性別、立場によって様々な見方になる深い一冊。私は只々やるせなさで胸が詰まった。2019/06/05

naoっぴ

91
これはもしかしたら女にはエゴにしか見えない男のロマンというものか?物語は自死した父の足跡をたどる娘と父康宏の、相反するふたつの視点から描かれる。康宏にとって社会的野心や憧れ続けた女性との関係はどこまでも崇高であり大切な人生のひとつ。一方、妻や娘にはそれは浮気性の駄目男としか映らない。男女のとらえ方の違いか夫婦の相性の問題か、傷つけた側が悪いのか。心の中で相反する気持ちに右往左往する読後。実に興味深い。男性側の感想も是非知りたいと思った。2019/05/12

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/13487581
  • ご注意事項

最近チェックした商品