内容説明
〈中華は漢民族の国〉は幻想だ!
今の中国を解くキーワードは「コンプレックス」、正しい中国史を正視しない限り中国は歴史に復讐されるだろう。
中華人民共和国「内モンゴル」で生まれ、北京で文化人類学を学んだ著者は、「漢民族」が世界の中心だという中華文明の価値観に、次第に違和感を覚える。
日本に留学し梅棹忠夫氏に師事、ユーラシア草原を調査するうち、従来の常識とは全く違う、価値観の逆転した中国史が形成された。
それは「中国四千年の歴史」という漢民族中心の歴史観からの逆転である。
大陸を縦横に駆け、開かれた文明を担ってきたスキタイ、匈奴、鮮卑、ウイグル、チベット、モンゴルといった周辺の遊牧民こそ、この地の歴史を作り上げてきた主役なのだ。
黄河に文明が花開いたころ、北の草原にはまったく別個の独立した文明が存在した。
漢人がシナを支配して「漢帝国」を称していた時代にすら、北方には別の国家が存在していた。
我々が漢民族国家の代表、中国の代名詞と考える「唐」ですら、実は鮮卑の王朝である。
現在の中国人は、こうした真実の歴史を覆い隠し、自分たち「漢民族」が世界の支配者であったという幻想にしがみついている。
絶えざる批判精神と綿密な実地調査で描き出す、諸民族が織り成す雄大な歴史絵巻!
解説・川勝平太
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
27
モンゴル出身の文化人類学者、静岡大教授。(漢民族に属された)中国など100年足らずの歴史であり、漢民族をはずしたユーラシア大陸史とでも言った方が良いタイトル。彼ら遊牧民が残したものは多くなく、残された遺跡、引き継がれた文化や言い伝えなど言葉で探らないと歴史的に見るものは大きくない。しかし当時に漢民族が統括していた証拠も全くなく(万里の長城はその証拠)独自の文化と伝統で固有の世界を築いていたであろうと思われる。北京語はmandarinと英語で言われるが、満洲の言葉が元になっている。美しいチャイナドレスしかり2020/09/10
卯月
6
著者は内モンゴル出身、北京で学んだあと日本へ。“野蛮な異民族に対抗する、「漢民族」による中国四千年の文明、歴史”は幻想だと、ユーラシアを股にかける遊牧民の視点から解説。人々は入れ替わり続け、劉邦の頃の「漢人」と今の漢人(漢字を使う人々)は違う。言語的裏付け。隋唐は鮮卑系遊牧民の国家(だから外国人の阿倍仲麻呂が出世できたんだな! 李白もテュルク系との説がある)だが、後の王朝の史書編纂者が出自を隠していく。遊牧民の機動力で広範囲に分布する考古学的遺物とか物凄く面白いが、「文化大革命で壊された」記述が多い……。2019/03/19
hatohebi
5
「野蛮」な遊牧騎馬民族と中華文明の対立という従来の歴史の見方を逆転し、ユーラシア中央の遊牧文明こそ合議制や多文化尊重など優れた制度を持った歴史の中心だったとする。かつて網野善彦らが過去から現在まで連綿と続く「日本」という統一体について疑義を呈したが、同様に「中国」についても一国史観的な枠組みから解放されなければならない。逆にどのようなシステムが「中国」を統一体として認識させているのか考えるのも興味深い。『創られた伝統』やB・アンダーソンと読み合わせたい一冊。2019/10/20
紫砂茶壺
3
良著。中国の歴史を北方のモンゴル高原から見たらどうなるか、というテーマ。東方の島国から眺めるととかく過大に評価されがちな中国だが、実際のところは騎馬遊牧民にいいようにやられていながら、自分たちこそが世界の中心である、と妄想に耽っているのが関の山ということが分かる。遊牧民をルーツに持つ王朝は異文化に寛容だが、漢族ルーツの王朝は遊牧民を恐れて弾圧に次ぐ弾圧。ウイグル問題などで中国共産党の異常性が指摘されるが、これは何も中国共産党だけの問題だけでなく、宋・明から続く漢民族の先祖返りというだけ。2021/03/25
Akiro OUED
3
宋の時代、実はキタイ、タングートとの三国時代だった。宋だったのか。確かに、歴史地図で見ると、南宋の領土は他の中華王朝と比べて、極小さい。元明清ときて今は漢族の独裁国家だけど、次は遊牧民の番だね、中国大陸を支配するのは。だから、ウイグルやチベットの人たちをいじめるんだね。2021/03/08
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