内容説明
大阪・天満、油問屋の黄櫨屋(はぜや)は、人骨を使っての精油法を秘伝とし、天運来福、殷賑をきわめていた。人骨は、墓をあばいて集められたゆえ、骨にまつわる幾百、幾千の男女の怨霊は、黄櫨屋一門にとりつき、狂乱の渦に投げ込む。近親相姦、墓あばき、骨集め、惨殺など、戦慄の地獄絵図が、著者独自の幻想世界を構築する。
感想・レビュー
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三柴ゆよし
18
野坂昭如には江戸時代を舞台にした一連の怪談ものがいくつかあるが、本書は未読だった。ここで怪談というのはあくまで前近代的な意味のそれで、「親の因果が子に報い……」式の因縁譚としての構造が顕著であるということ。人骨を用いた油屋稼業にまつわるもろもろの恨みつらみが、死霊の祭宴というべきクライマックスに向けてずんずん高まっていくさまが凄まじく、まさしく巻を措く能わざるおもしろさである。野坂昭如特有のねっとりと油ぎった文体がテーマとぴったり合致しているのもいい。最高のアンモラル小説。2021/04/28