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内容説明
啓蒙主義は、すでに乗り越えられた浅薄な思想なのか。のちの思想家たちから「反省哲学」「過去の思想」という烙印を押されてきたが、はたしてそうか。18世紀啓蒙主義の「明るい鏡」を現代批判の鏡として位置づけ、自らそれとの内面的対決を果たした著者は、批判精神に満ちた鋭い洞察力で、啓蒙主義の思考形式から「美学」の誕生までの諸側面を余すところなく分析し、その統一的結びつきを解明する。哲学者カッシーラーが従来の批判を排し、啓蒙主義思想の再評価を打ち立てた古典的名著。文庫化にあたり全編改訳。下巻は啓蒙主義の歴史観、国家観・社会観、美学の確立などを収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
上巻の理性批判からはカントの実践理性との媒介である判断力という例の三批判の図式が予想できる。が、本巻での啓蒙時代の歴史、法、国家、社会、美のテーマは、カントが批判する個から普遍を導出する理性によるものであり、後にヘーゲルの理念と現実を統合するテーマ群を成す点を読者に想起させる。カントの批判を刷新して現代物理学から経験と科学を区別し(『実体概念と関数概念』)、教条化する際の「予断」を退ける判断力を本書で模索する著者は、一方で美と崇高を区別したカント的判断力を混濁させるファシズム国家の美に対峙するかに見える。2019/05/01
tieckP(ティークP)
1
この本が中心とする論点は、17世紀が普遍を措定してから個物を捉えたのに対して、18世紀は個物を見据えたうえでそこから普遍を導き出そうとしたという傾向の差だと思う。この本自体が、各哲学者をしっかり捉えつつ、背後の時代精神としての啓蒙主義を炙り出したという意味で、その精神を受け継いでいる。とまれ、その主張は上巻ではっきり明かされているから、読者はそちらを苦労しつつも発見のように読み、下巻についてはそれを法や美学に適応したものとしてあっさり読むかもしれない。鷲見洋一の解説は最後の18世紀研究の展望を除けば秀逸。2012/09/16