内容説明
あなたを見守り、また見送るなかで、二人ともに過ごした夫婦の時間は、行きつ戻りつしながら、記憶にさらに深く刻まれ、やがて新たに繋がり始める――沖縄に暮らす日々が、しずかに、ゆたかに、語りだされる。九十二歳の日常と沖縄の現状を綴り、生き抜いてきた時代を書き留める「御嶽の少年」等六篇を収録する最新作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chantal(シャンタール)
71
作家93歳当時の、亡き妻への回顧録である『あなた』。戦中戦後を沖縄と言う激動の地で、公務員と作家の二足の草鞋を貫いた作家を支え続けた妻への感謝と愛情。夫婦とはこうして共に生きる時間を紡いで行くのだなあ。年老いて尚、互いに支え合い、労わり合いながら生きる事の素晴らしさ。私にはない未来だろうけど、皆さん、相方を大切に。その他私小説風の短編5編。沖縄と言う地の難しさ。これからも続いて行くのか?大城さんの出身校は上海にあった東亜同文書院。現愛知大学の前身とは知らなかった。未だ知らない歴史を垣間見た思い。2022/02/28
信兵衛
28
じっくり読むほどに味わいがあり、また喜びも感じる、という類の一冊。 また、行間から感じられる沖縄の雰囲気も好いんだよなぁ。2018/10/02
aloha0307
27
沖縄に生まれ育ち、93歳 来し方を振り返ると沖縄現代史にもなっています。思い出を重ねる そこには喜びだけでなく、悲しみ・悔い も...分身のように寄り添ってくれた亡き奥さんを”あなた”と呼ぶ。それを”私小説”としたのは興味深いですね。「以前はアメリカだけを相手にした時代。いまは日本政府を新たな相手として...」の記述を読むと、粛々と(これ、大嫌いな言い回し)辺野古を埋めはじめた政府、とりわけ一・九分けの官房長官の頭部とギョロ目が思い浮かび、あっち行け!とその残像を振り払いたくなりました。2019/01/31
かおりん
15
93歳の沖縄生まれ、戦後も沖縄で過ごしてこられた著者。文学というジャンルで、私にはとっつきにくい話だった。伴侶の死と夫婦の歴史を、沖縄の歴史や生活を背景に綴った『あなた』はとても静かに時間が流れている感じがした。芥川賞や川端康成文学賞など受賞されている。2019/04/12
さいちゃん
7
読み友さんの素敵なレビューでこれはぜひ!と読みました。私小説で著者、大城さんの思い出ともいえる奥様、沖縄のことが描かれた短編連作集で沖縄ならではの歴史も出てきます。飾ることなく淡々と書き綴られた文章には品格と知性が溢れていて、読み手にきちんとしっかり読まなければと思わせる深さがあります。表題にもある「あなた」では強い信頼で結ばれた心穏やかな夫婦の姿に人としての美しさを感じました。簡単に感動という言葉では申し訳ない、そんな気持ちです。2018/10/18
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