内容説明
この国には「歴史」が足りない。歴史に学べと簡単に言うが、先行きの見えない時代の中で、それはいったいどういうことなのか――。当代屈指の思想史家が、歴史センスのみがき方を緊急講義。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
39
歴史とか朱子学とかいいはじめると、不思議と保守的に聞こえるのはなぜなのでしょうか。2章に出てくるエドマンド・バーグも保守派でしょうし、本書にどこか全体的に保守的な雰囲気が漂います。著者はその批判に応えています。バーグのいう近代保守主義は、実は名前は変わってもいつでも同じ権力によるため超歴史主義だといいます。これに対して、1章に出てくる荻生徂徠の「温故知新」は、過去にあった様々なことを学ぶ→温故、過去とは重ならない新しい発想で対応する→知新、だといいます。ドラスティックに変わるのも歴史のうちです。ここに2019/02/10
Kentaro
32
歴史はどう切り分けて何を背骨に見るかによって、どうとでも言える。そして今日次第で歴史の見え方は変わる。切り方も変えた方がよいことがある。今に合うものさしに取り換えながら見ることになる。一つのものさしを信じすぎてはいけない。歴史とは客観的な事実を見据えることだと思いがちだが、どんな人も主観からは逃れられない。自分が歴史の中にどういう願望を投影しているか、その自覚がないと、視野の狭い「特定歴史真理教」に陥る。これは最低最悪であって、私はこうだけれども、あなたの立場からするとこうですねという対話を不可能にする。2019/03/13
trazom
29
片山先生は、歴史に対する姿勢として「温故知新主義」を提唱する。荻生徂徠が指摘した「事の変ずること窮まりなし」という不確実性を認めた上で、謙虚な相対主義に立つ姿勢である。本書では、それに対立する概念として、「保守主義」「啓蒙主義」「ロマン主義」「ユートピア主義」等を徹底的に批判する。そして最後に、田辺元博士が登場する。「偶然性こそが歴史の要諦。歴史に束縛されている我々は、偶然の奴隷であり、つまり自由なのだ!」として、実存主義の「投企」という概念に到達するのだが、その論理展開の何とアクロバティックなことか…。2019/03/27
樋口佳之
26
温故知新主義を掲げ、歴史に触れる事の意味とその作法をアンチパターンを列挙する中で語っている本かな。/勝った者には皆が従う。従わせることに成功した者は徳があると評価される。そうした思考回路が機能していないと、「悪逆非道だから徳が高い」という日本語は成立しません。『日本書紀』にはその成立しない文章が堂々と書いてあるのだから、古代日本人の思考では、徳は勢いから独立していないことになります。/「勢いのある者」についていったほうが間違いが少ない。「勢い」史観は、いちばん原初的な歴史観なのかもしれません。猿でも分かる2019/02/11
おおにし
22
全体にまとまりのない印象の本であったが、「温故知新主義」については理解できた。歴史を学ぶとは過去現在未来すべて「事の変ずること窮まり無し」(荻生徂徠)であるという世界の原理を知ることである。だから万巻の歴史書を紐解く必要がある。そして過去とは重ならない新しい出来事には過去に捕らわれない新しい発想で対処することが求められる。これが「温故知新」。そして温故知新主義者は謙虚な相対主義者であるべき。著者は近頃流行の“日本人本当はすごかった”史観だけが本物の歴史と信じる日本人に対して警鐘を鳴らしているのだと思う。2019/02/09
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