- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
戦国大名の領国は、軍事侵攻で制圧した直轄支配地域と、彼らに従属した「国衆」(先方衆とも)が排他的に支配する「領」(「国」)とでモザイク状に構成されていた。この戦国期固有の領主たちはいかに誕生したのか。大勢力の狭間で翻弄されながらも、その傑出した実力で戦国大名とどのような双務的関係を結び、彼らの権力構造にいかなる影響を及ぼしていたのか。武田氏を主軸に、史料渉猟から浮かび上がる国衆の成立・展開・消滅の歴史を追い、戦国大名の領国支配と軍事編成の本質を総括・通覧する。
はじめに
第一章 戦国期の国衆と先方衆
第二章 室町期国人領主の成立と展開
第三章 国人領主から国衆へ
第四章 戦国大名領国下の国衆「領」(「国」)
第五章 国衆の武田氏従属
第六章 先方衆としての国衆と武田氏
終 章 武田氏滅亡と国衆
参考文献一覧
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
53
司馬遼太郎の時代にはなかった国衆という概念は、戦国期理解に欠かせぬものとして時代小説にも浸透しつつある。単に大名に服属した中小領主と思われがちだが、大きな自治権を有し大名権力をも左右した実態は相当複雑だ。著者の専門である武田氏を取り上げて、その成立から大名と国衆の関係がどう変わってきたかを史料に基づき明らかにする。勝頼を見限って一斉に離反したのが武田滅亡の原因となったとは、間違いなく戦国史を動かす存在といえる。伊達や毛利、大友や島津でも国衆と大名の関係が注目されており、新たな歴史研究の先駆的業績といえる。2020/11/07
スー
24
77武田家の国衆と戦国大名の関係を読み解いてそこから周辺の国衆達の動向を見ていく。先方衆という名を見てただ最前線を任される可哀そうな人達というイメージを持ってましたが一万石ほどの領地を持った有力な国衆を指し取りまとめ役を努めていた。領国経営や勢力拡大には国衆の重要性が良くわかりましたが武田家滅亡のきっかけとなった高天神城落城後を見ると国衆の信頼を失うとあっと言う間に一部の直轄地以外の領土を失い破滅するという破壊力も秘めていて国衆の怖さも改めて認識しました。恐ろしや〜2022/09/04
YONDA
19
武田氏を基にして、大名と国衆の関係を書き上げた良書だと思います。国衆なくして領地運営は上手く行かず、軍事行動にも支障を来す。高天神城に籠城する国衆に後詰めを出せず助けられず、見殺しにしてしまったことが国衆の離反を生み、武田滅亡へと突き進むのが両者の関係を顕著に表しているのではないかと思う。そして、武田の先方衆から豊臣期と徳川期を生き延びた真田家の凄さを改めて感じさせる。2021/08/29
さとうしん
14
武田氏領国を例として、室町期の国人領主から戦国期の国衆へ、そして国衆の終焉までを追う。「戦国大名」「国人」「国衆」などについて歴史学の用語としての概念規定の問題にこだわっているのは、他の地域・時代の研究でも良い手本になりそう。本論の方では、大名と国衆との関係が江戸期の幕府・将軍と大名との関係のひな形として生かされているのかなと感じた。続考として、国衆の終焉の過程をもう少し詳しく読みたい。2019/01/12
りー
8
専門的な本でした。半分くらいはナナメ読み。真田丸や直虎を思い出しながら読みました。昔イメージしていた虐げられる百姓像が、確かに変化しているのを感じます。・・・室町幕府は、最盛期に検地のような作業をやっており、そのデータをもとに荘園支配を行っていたが、相次ぐ乱で荘園制システムが崩壊。●「国衆」は、独自の領地を持ち、“家中”を編成して自立した領主である。●村は、百姓が構成する「寄合」によって合意形成が成され、警察権・裁判権を持ち、荘園領主より国衆(最初は国人という)を選択するなど、意思決定を行っていた。2019/05/19