内容説明
ジャーナリスト秦隆司が作り手側から見た出版の世界を描くノンフィクション。生き残るための出版マネージメントとは?
“出版は「完全に死んでいる」”
ボイジャーから出版した『マニフェスト 本の未来』で、返本の問題に焦点をあて、根本的な改善を見送り続けるアメリカ出版界の旧弊をこのように表したジョン・オークス。彼は2009年、ニューヨークで友人と「返本ゼロ」「読者への直接販売」を目指す出版社ORブックスを創業、10年足らずで年商1億円をこえる出版社へと成長させた。ORブックスにはオノヨーコ、ジュリアン・アサンジといった著者が集まる。本書はJ・オークスのORブックスの実態、アメリカの新聞や出版の歴史を例に、出版社が生き残るための鍵を解き明かす。
【著者】
秦隆司
1953年東京生まれ。マサチューセッツ大学卒業後、記者、編集者を経てニューヨークで独立。1996年にアメリカ文学専門誌『アメリカン・ブックジャム』創刊。2012年アメリカン・ブックジャムのeBook版、eブックジャムの第1弾、第2弾をボイジャー社より出版。2018年『スロー・トレインに乗っていこう』を電子版として復刊。アメリカの政治ニュースを追うポリティカル・ジャンキーでもある。
目次
アメリカの出版システム
100年前のフェイクニュース
パブリッシング・インスティチュート
バーニー・ロセット
出版人アルフレッド・クノッフとの戦い
直接販売の勝利
書店のビジネスモデル
ORブックスの組織
返本ゼロのビジネスモデル
メディアと読者へのアプローチ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ステビア
20
タイトルが中身を適切に表していない気が…。ジョン・オークスという編集者から切り取ったアメリカメディア史。チャタレイ裁判がアメリカでもあったことを知る。オークスは今書店を経由しない直販オンリーの出版社をやっているとのこと。出版流通システムの問題点は日米で共通点があるようだ。2022/10/31
Yuko
6
出版業界に纏わるエピソード、時代の変遷やニューヨークの雰囲気も楽しめる。 ジョン・オークス氏のNY Timesとのつながりや、NY Timesがどのように発展してきたかの記述もとても興味深かった。 長年旧態依然としていた出版業界が、今まさに変わろうとしていく様は、悲観ばかりではない希望が見えるような心持ちになった。 2019/04/01
qoop
6
親子三代でアメリカの出版業に関わってきた編集者を取材し、出版事情の変遷を追いながら現在の状況を考察、これからのあり得べき業態を探る一冊。デジタル/オンデマンドに活路を見出した経緯を聞き取りながら著者自身の思いを重ねていく。かつて「アメリカン・ブックジャム」誌の編集長を務めていた著者。熱心とは云えないながら同誌の読者だったので、ふわっとした読み心地ながらいつのまにか問題の芯に切り込んでいる著者の文章を懐かしく、一面で新鮮さを感じつつ読んだ。翻訳文学の受難期である今、またああした雑誌を読みたいな。2019/02/04
スプリント
5
ORブックスよりもニューヨーク・タイムズの歴史の方に興味が惹かれた。でも返品ゼロは素晴らしい。2019/03/31
かづ
3
タイトルと装丁の良さに買った本。中身はタイトル通りってよりはニューヨークを拠点とする出版業界とある出版社についての話。たぶん著者の中ではタイトルと中身が繋がってるんだと思うけど、そのあたりはわたしの教養不足。新聞、雑誌、本の編集が、アメリカでどうなされているのかを垣間見ることができたかと。著作権のあたりは面白かったなあ。2019/12/03