内容説明
取り壊しが決まった団地に暮らす祖父を訪ねた六年生の杏奈。そこはかつてドラマ『たんぽぽ団地のひみつ』のロケ地だった。夢の中で主演の少年、ワタルくんに出会ったことをきっかけに、杏奈と祖父、そして住民たちは、団地をめぐる時空を超えた冒険に巻き込まれて――。大人たちが生きた過去への憧憬と、未来へ向かう子どもたちへの祝福に満ちたミラクルストーリー。『たんぽぽ団地』改題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
113
昭和の高度成長期の象徴のひとつだった団地。今はもう昔の話でさびれてしまった団地もあるという。そんな団地を舞台に時空たつまきが過去と未来をつないでいく。ノスタルジー溢れるファンタジーな世界。たんぽぽの綿毛のように夢が未来につながっていく。【新潮文庫の100冊 2018】2018/07/17
Atsushi
73
可愛いタイトルに読む前から安心感。日々報道される凶悪犯罪やハラスメントなどは無縁の重松ワールド。取り壊しの決まった団地を舞台に大人も子どもも時空を超えた冒険に旅立つ。戻れるはずもないからこそ戻ってみたい懐かしいあの頃。最近の重松作品にマンネリを指摘する家内も「読み終わったら貸してね」とか(笑)。2018/09/12
とろこ
71
私は団地に住んだことがないので、一時期、とても憧れていた。そんな団地を舞台に、昭和と平成の時代が入り混じる物語。登場人物の会話から、なんとなく、<昭和は良かった、昔は良かった>という懐古主義を感じることもあった。けれど、そうした時代が今へと続いているのも事実。杏奈が、とても好感の持てる子で安心感があった。誰にでも、子ども時代があった。そんな子ども時代への郷愁と憧憬。そして、現在の子どもたちが作るであろう未来。「お話の世界ではどんなことも起きる」。正に、なんでもあり、の一冊だった。2019/02/02
ゆうまっき
64
昭和に建てられ平成に取り壊しが決まった「たんぽぽ団地」を舞台に、そこに住んでた人達との交流を少しファンタジーを交えながら懐かしく、暖かく感じさせてくれるお話でした。出てくる登場人物もみんな個性豊かでよかったです。たとえ団地がなくなってしまったとしても、そこで過ごした日々をいつまでも大切に心に残しておければいいなと思いました。2019/02/21
ひめありす@灯れ松明の火
57
【新潮部 自由課題】新潮部といえば重松清。そして必ず2冊入っているのが重松清。と言ってもほぼハッピーエンドなので毎回安心して読めます。たんぽぽ団地という言葉がぴったりな、黄金色の夕暮れの物語でした。取り壊しの決まった団地の放つ、最後の輝き。小学六年生の子ども達の、子ども時代が終わりを告げようとしている時間。今のいじめはあんな感じなのかな。大人顔負けの嫌らしさである。でも、それも最後は丸く解決してしまうSF風味の入れ子構造が楽しい。何処までが本当で、どこまでが劇中劇なのかな。いつか重松さんに聞いてみたいです2018/08/06