人間

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人間

  • ISBN:9784907511111

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内容説明

《そいつ/自由な人間が現れる/ほんとだよ/おれを信じてくれ!》と『戦争と世界』の終結部が告げるように、どうしても書かれねばならなかった、マヤコフスキー25歳の第四長詩。1905年の挫折した革命の影のなか、詩人はどんな叛乱も触れられない “万物の支配者” に復讐をいどむ。1917年の成就する革命寸前に書かれ、革命前マヤコフスキーの総決算となった長詩を、詩人・小笠原豊樹が遺した新訳でおくる。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

113
マヤコフスキーの長編詩。自分の生涯を表現したものらしい。私の好きな詩人岩田宏と共通する資質を感じた。軽快に跳ね回る言葉に潜むほろ苦さと叙情性が、心に沁みる。自分が若くして死ぬことを予感しているような表現もあって、読んでいて複雑な気持ちになった。一番心に残ったのは自分は詩人にしか過ぎないと言う諦観だった。文学は現実を変えることはできないと自覚しつつ、それでも書き続けたところにこの詩人の栄光がある。2015/05/20

Y2K☮

32
今月のポエム。著者にとって詩とは何だったのか。その第一義は生計を立てる術ではなかったはず。岡本太郎は描いた絵をお金に換えない画家だったが、それとも少し違う。マヤコフスキーは本気で己の詩で革命を起こそうとしたのだろう。ファッションやニュアンスではなく文字通りに。即ち社会から貧富の差を取り除こう。ダメなら潔く退こう。まるでLUNA SEA「ROSIER」のJパート⇒『孤独で残酷な現実。それでも光を探す。俺は引き金だ。最後の道は自分で決める』全面的な同調はできないけど、見下ろす万物の支配者に一矢報えるものなら。2018/01/03

Y2K☮

28
つくづく詩というのは自由度の高いジャンルだ。競技場を飛び出し、町や道路や住宅や空の上までも縦横無尽に駆け巡るパルクール。英語で云うとフリーランニング。ノールールだからこそ逆に著者の偽りない生の倫理観を感じ取れる。公人として見ればデカダン極まりないし、だらしない面も多々あっただろう。でもこの翼の生えた剥き出しの言葉の群れに触れ、それでも何も感じぬ人こそ私は不幸だと思う。とはいえ既存の宗教で事足りる人には不要だろう。それで幸せならOK。ただマイノリティーだって確かに生きている。一人ぼっちでも救われなきゃ嘘だ。2015/05/11

cockroach's garten

17
戦中に書かれた最後の作品。この本について訳者は直前に書かれた作品『戦争と世界』で彼が戦争について書いたことで、必然的にこの『人間』を書かなければならなくなったという。本書では彼自身の誕生から臨終までの生涯を辿る。当然フィクションだ。が、不吉にもマヤコフスキーの最期を予期するように作中のマヤコフスキーがピストル自殺をしたと言われる場面がある。数年後現実の彼も引き金を引き、果てる。さて、本書は戦争に嫌気を感じているマヤコフスキーが愚かな戦争好きに対して巧みな比喩をぶつけるものの、無力ゆえの虚しさが物悲しい。2017/07/18

6
わかってるさ、/地獄にあえぐ/罪人たちは/ぼくの名を呼ばないだろう。/法王たちの拍手喝采につれて/僕の幕はゴルゴタに下りないだろう。/だからこそぼくは/レートニー公園に/朝のコーヒーを飲みに行くんだ。(22ページ)2019/08/26

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