内容説明
ソクラテスと三人の人物との対話は,弁論術が立身栄達の術とされている現実や若い人の実利主義的道徳意識などを次々と明るみに出す.プラトンは本編によって,個人の道徳と同時に政治の問題を追求し,アテナイの現実の政治に痛烈な批判を投げかけた.後に『国家』において発展させられた哲人政治の思想の第一歩である.
目次
目 次
凡 例
ゴルギアス
解 説
訳 者 注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
132
序盤は弁論術や正義の本質に迫る。快楽主義者が提起する"快即善"への反駁はソクラテスの鉄板ともいうべき帰謬法の間接証明で、これに則った弁論術批判の観点も『パイドロス』と異なる。対話編としての旨味は話が国家レベルに拡大してより豊かに。相手の論点逸らしを執念深く潰しながら演説に没入する様には当時のアテナイ政治への怒りや葛藤が現れている。実利・享楽主義に染まった社会に横行する安易な「迎合」、その先に「善」はあるのか?普遍的な生活理念の対立を扱った本書は、世間の思潮と哲学批判に自問自答を重ねた著者の決意表明である。2022/05/24
ehirano1
93
ソクラテスが3人の詭弁師をバッタバッタとぶった切っていく様は爽快ですらあります。そんな劇場を楽しみつつも、弁論の本質に迫り、そもそも「弁論」は何のため/誰のために為されるのかを示したソクラテスはやっぱりスゴイと思いました。2025/01/03
esop
82
古代ギリシャの哲学者プラトンに書かれた対話小説。 2000年以上前に書かれたとは思えない、 自身の師であるソクラテスと3人の弁論家を議論させ、次々と「はい論破!」していくお話。非常に痛快でありながら、現実世界にいたらちょっと嫌なやつかも? 訳者と解説が優秀なので、読みやすくなっている。 気に入ったフレーズ「世の大多数の人たちが僕に反対するとしても、ぼくが僕自身と不調和であったり、自分に矛盾したことを言うよりましなのだ」2025/01/09
かわうそ
43
面白すぎる。本書では弁論術に対する批判が展開されないくのだが、その弁論術はソクラテスが迎合と呼ぶものの代表例なのである。迎合とは経験から行うものであり、技術と対置される。技術は理論的に善を目的として構成されるものであり、快楽を目的とする迎合と対立するのは当然である。そして、善とは秩序であり、放埒とは秩序とは真逆なものだから、放埒が魂にとっていいものであるはずがないということになる。珍しくプラトンの社会への怒りのようなものが垣間見える一冊でそういう意味でも貴重である。2024/12/03
かわうそ
38
『してみると、たんに法律習慣の上のことだけではないのだね、不正を行うほうが不正を受けるよりも醜いとか、また、平等に持つことが正しいとかいうのは。それはまた、自然の本来においても、そうなのだね。』152 優れている、そして個人よりも強いものである多数者が平等を求めているということ、また、多数者が不正を行うほうが不正を受けるよりも悪いことだと考えているのは明らかであるので強いものが不正を行うことができるという理由で不正を行うことは正当化され得ないと。2024/04/10