内容説明
著者がライフワークとしていた「敵討ち」。物語として美化されてきたものを史実に則って描き直し、厳選した晩年の代表作。未収録だった50年ぶりの新作『日本敵討ち集成』と同時刊行!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayzk
6
固有名詞と江戸時代の世の中の仕組みに関する用語が多く、文章も言葉のつなぎや句読点の付け方がちょっと私には合わなかった。講談のような展開のわくわく感もなかった。 早い話が少し読みにくかった。テンポと読みやすさと史実に基づく現実味をこっちが勝手な期待しすぎていた。 しかし、敵討ちの苦難はたっぷり感じられた。2021/12/03
うーちゃん
4
角川文庫から一緒に出た「日本敵討ち集成」が良かったので、「異相」にも挑戦した。全国の古文書から仇討ちの事例を集めて並べたのが「集成」。これに対し、「異相」は、特殊な敵討ちに焦点を絞ったうえ、読みやすさを優先し、一定程度、会話文や現在では分かりづらい風物についての説明が入っている。とはいえ、創作で話をふくらませることはほぼないようだ。一番ビックリしたのは、仇討ちをやり遂げた人物が後に大審院の判事になったというくだり。今なら、殺人犯が最高裁の判事になるようなものだ。まったく「事実は小説より奇なり」だ。2018/12/22
風が造る景色
2
異相とは、普通とは違った姿。 鍵屋の辻や赤穂浪士とか大河ドラマになる有名な敵討ちではない、人知れない敵討ちから江戸期の心意気と世相を表す。 『瞼の母』の著者の晩年、大型トランクいっぱいに書き溜めた草稿の中から選び抜かれた13編。 どれも後から飾ったものでない事実を連ねる書き方で迫力と残酷さがある。 特に数編の主人公は武家でもなく、町人や農家であったりで、それでも数十年の苦難の末に敵を討ち果たす。人の一生のすべての力と時間を使ってやり遂げる、清冽で壮烈な精神の姿が感動的な話となっている。2021/02/15