内容説明
「本は読まなくてもいい」「効率は求めない」……。生徒との対話は、世間の常識を覆すことから始まった。人間が成熟するとはどういうことなのか? 他人の評価を気にせずに道を切り開く術とは? 漱石と「坊っちゃん」の姿を自身に重ねながら、養老流・人生の極意を伝授!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
120
「人生を変える本があるように、人生をかけて書かれた本がある。『坊っちゃん』は漱石が人生をかけて書いた本である」養老先生は中学生に語る。「お清」について時間をさいてくれているから嬉しくなる。坊っちゃんは悪に負けたのではないと言う。私も心からそう思う。養老先生いわく「清が死ぬこので、坊っちゃんは一人になる。ここで物語は終わっても、坊っちゃんの人生はこれからも続く。死とは突然やってくる。人は死んでも、心に生き続ける。人生とは、こういうものだと思います」東大医学部の解剖の教授の語り。2018/10/01
き
50
夏目漱石「坊ちゃん」をもとに、「大人になる」ことについて考えさせられる一冊。「ただ一つの目的だけを効率よく達成することが大人になることではありません。」「寄り道や回り道をすることで、人間は思いがけず成熟していくのです。」この文が印象に残った。2021/03/12
レモン
33
どこかで読んだ『坊っちゃん』の紹介文に「痛快小説」とあり、疑問符が浮かんだことがある。読了後は痛快と言うよりほろ苦い気持ちになったので。本書でも書かれていたように、坊っちゃんと山嵐はうらなり君の仇討ちを果たすが、学校を去らねばならないのは赤シャツではなく坊っちゃんたち。勧善懲悪で終わらないところが意外でもあり、興味深かった。その辺の理由も書かれており、またひとつ新しい解釈が増えて深くなった。2022/01/01
ロビン
16
kindleunlimitedにて。冒頭の清の描写だけで泣けてくる夏目漱石の名作『坊っちゃん』を題材にしつつ養老さん自身の経験を通して「大人になる」とはどういうことかを中学生と共に考える一冊。『坊っちゃん』の赤シャツや野だいこのように世の中とうまく折り合いをつけることができる人を「大人」と思いがちだが、自分の頭で考え、自分の価値観をしっかり持っている人こそが「大人」だと養老さんは言う。世の中の物差しも、それに順応している人々もいつどう変わるかわからない。右顧左眄しない確固とした自己を持ちたいものだ。2019/11/26
Lee Dragon
15
養老孟司さんの坊ちゃん解説、「坊ちゃん」と言うタイトルから「大人になるとはどういうことか?」という問いから始まる。 夏目漱石の重要な思想「自己本位」が出てくるが、なるほど自分で考えて、自分の道を切り開いて進むことこそが大人なのかと考える。 教科書で取り上げられる「こころ」は夏目漱石その後の思想「則天去私」の精神を反映していると言うが、SNSなどで他人との比較が容易になった現代において読まれるべきはやはり自己本位である坊ちゃんであると思う。 まだまだ大人になりきれないことがおおいなあと思う今日この頃。2023/08/15