内容説明
都内の2LDKマンションに暮らす男女4人の若者達。「上辺だけの付き合い? 私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め…。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
824
千歳烏山の2DKのマンションに暮らす5人の男女。接点はそれだけだ。隣室の男とは面識はあるものの、これもごくたまに顔を合わせるというだけ(実は一度だけ接点を持つのだが)。現代の都市である東京のある種の姿を凝縮して描き出す試みと言っていいだろう。5人の中で最も気楽なのが、作家本人を投影した観察者たる(ただし「ふぬけ」なのでけっして鋭い観察者ではない)学生の良介だろう。他の5人は多かれ少なかれ「闇」を抱えている。あの事件がこんな風に収束するのかと納得もし、内的な戦慄を覚えもする結末。みんな知っていたのだ…。2016/12/24
takaC
371
さまざまな闇がかくされているのが垣間見えた。「こわい」と捉えれば確かに「こわい」2016/02/19
hit4papa
361
シェアハウスを舞台として、上辺だけの心地よい付き合いを満喫する、男女の姿が描かれています。冒頭は、ゆるゆるの青春小説の趣です。リビングでの集いが、チャットルームに例えられている通り、彼らは、それぞれが皆に期待される人物として振舞っています。しかし、読み進めるうちに、登場人物たちの抱える心の闇が鮮明になっていくのです。同居人に適応するための形づくられたペルソナ。本当の自分が、熾火のように燻り続けます。出だしとの落差が大きいだけに、クライマックスは衝撃的です。戦慄の群像劇というところでしょうか。2016/09/19
にいにい
352
吉田修一さんの作品は、人というものの本質をサラッと見せつける。言葉の端々や何気ない行動に。ドキリとさせられたラスト付近以外にも、隠された表に出せないものが蠢く感覚が...。何故か頭の中に残ってしまう言葉。「良介くんって、好きな人が一番すきなものを愛してしまうところがあるよね。」「抜け出しても、同じ世界の中で、ただ少し大きくなるだけ。」「居心地のを求めるあまり、無難な役を演じる。」生きるってなんだろう?困惑の一冊。2014/11/18
酔拳
300
5人の若者のルームシェアでの日常を描いた小説。各章とも、5人が入れ替わり、5人それぞれの視点から各章が展開するのだが、各章ともに、はじまりの文章が格別におもしろく、読書欲をそそられた。話の展開から、最後はよそうできなかった。 解説にもあるように、何回読んでも、最後の怖さは変わらないだろう・・・2016/01/08