内容説明
文系的知識と理系的知識の融合、知と情の両立。百科全書的な知識で「人間とは何か」を描ききった衝撃のデビュー作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
66
ほぼ一気読み(老眼に鞭打って)! リチャード・パワーズは、今年三月にたまたま入手し読んだ『黄金虫変奏曲』に驚倒。本年最高の(自分にとっての)掘り出し物。吾輩はパワーズについては完全な遅れてきた読者である。遅れを取り返す…ではないが、本書以外ではこれしか店頭になかった『惑う星』を入手しさっそく読んだものである。期待にたがわず。 2024/09/20
えりか
49
知識量と複雑な人間関係につまずくが、すごい物語とかしかいいようがない。これは二十世紀の物語。ぬかるんだ道に立つ三人の農夫。この写真を発端として進む3つのストーリー。それぞれのストーリーが大きく広がっていくものの、複雑な人間関係を形成しながら、バラバラであった三つの物語は繋がっていく。その繋がっていく過程に心奪われる。また戦争や技術革新の二十世紀という大きな歴史のうねりを描きながら、それに巻き込まれていく、三人の農夫たちの運命が見事に描き出されている。彼らが向かう先は舞踏会という名の暴力と変化の二十世紀。2018/07/28
ヘラジカ
36
ここまでの力作が、作者自身は読まれることを想定していなかったとは驚きだ。確かに持てる知識とエネルギーを全てつぎ込んだ感のある作品だが、目的や構想がしっかりしているからか整然とした印象を持つ。三つの時間軸と物語の僅かな"ズレ"は立体化させる為の試みだとは、なんて技法的な作家だろう。該博な知識も併せるとやはりピンチョンを思い起こす。読者を視ていないにも拘らず、ミステリー仕立てで読ませるストーリーを完成させているのも素晴らしい。これがデビュー作だなんて世界にはとんでもない作家がゴロゴロいたものだ。2018/07/10
鼠∞
25
理系出身という前情報バイアスもあったけれど、この風呂敷の広げ方、そしてたたみ方が何とも数式っぽいなと。複雑に人物やエピソードが増えていくも、最後はシンプルな形にまとまる。最初はどう本筋に絡んでいくのか戸惑いながら読んだメイズの話も、意外とすんなりと合流する。読みながらザンダーによる表紙の写真を何度も眺め、ページを進めるごとに変わっていく見方っていうのも楽しめた。写真の特性である、見る側と見られる側の共犯関係により観点が幾らでも存在するという点は、本と読者の関係にもよく似ている。2018/07/25
tokko
24
アウグスト・ザンダーの一枚の写真から壮大な物語が紡ぎ出される。ペーター、アドルフ、フーベルトがどのようにしてこの写真に映るに至ったか。そしてどのようにこの後の人生を歩むことになったのか。そして彼らが生きる二十世紀は一体何だったのか。戦争と消費社会、情報産業にオートメーション…。実在の人物ヘンリー・フォードやサラ・ベルナールなどを巧みに登場させ、どこまでが本当でどこからが創作か(そもそも本当ってなんだろう)境界線も歪みも感じさせない力作。歴史や記録についての考えが揺らぎます。2018/08/01
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