文春新書<br> 王室と不敬罪 プミポン国王とタイの混迷

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文春新書
王室と不敬罪 プミポン国王とタイの混迷

  • 著者名:岩佐淳士【著】
  • 価格 ¥968(本体¥880)
  • 文藝春秋(2018/08発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784166611805

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内容説明

穏やかな国民性で日本人に人気のタイ。だが、そんな明るいイメージの裏に、想像を絶するタブーがある。それは「王室」だ。

ごく一般の人が、SNSに投稿した何気ないひと言によって「不敬罪」に問われ、30年近い懲役を科せられることもある。

現在のタイの発展の最大の功労者は、2016年に死去したプミポン国王である。プミポン国王は第二次大戦後、王制の下でのタイ式民主主義を推し進め、数々の政治危機から国を救った。タイを繁栄と安定に導いた王室は、次第に絶対的な存在と目されるようになった。

だが、1990年代以降、そんな王室に“対抗”する勢力が台頭してきた。タクシン元首相である。タクシンは地方農村への援助や公共投資によって貧しい人々の心を掴んだ。王室周辺は、そんなタクシンに警戒感を強めてゆく。結局、2006年にクーデターによってタクシンは国を追われた。

しかしタクシン追放後、王室の権威はますます権力闘争に利用されるようになった。

政治家、軍部、司法の重鎮たちが、政敵を追い落とすために「反王室」のレッテル貼り争いに興じる。経済格差が進行し、国民も分断の度合いを深めている。

だが、不敬罪は海外メディアにも適用されるため、そんなタイの情勢は抑制的にしか伝えられてこなかった。タイに関する報道は核心に触れられず、読者に理解しづらいものだった。

本書は、不敬罪で投獄された人の肉声やクーデターを実行した軍部関係者のインタビューなど、深い取材によって得られた貴重な情報が豊富に盛り込まれている。

タイにおける王室とは何なのか? このテーマは、皇室を戴く日本人にとっても無関心ではありえない。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

makimakimasa

13
1782年に始まるチャクリー王朝は、1932年に絶対王政打倒も、57年クーデターが王政の権威利用で復権。兄の怪死で即位したラーマ9世は70年間在位した。平等に価値置く西洋的民主主義より、国王の世直しに基づく秩序を重んじてきた王室サークルは、金権政治と行財政改革で既得権益を乱すタクシンに反王政のレッテルを貼る。恩赦法案の強行可決、不正な情実人事、米買取制度の職務怠慢?で失脚したインラックの支持者を質の悪い多数票と蔑む都市部エリートは、公共の利益を考えないポピュリズムは足るを知る経済を否定して道徳失うと主張。2021/01/30

Eradist

12
タイでデモが起きているという記事をニュースで数年前から見かけたが、タクシン派や反タクシンなどあまり意味が分かってなかった。タイでの王室と不敬罪という文化背景的なことを知ることで、タクシンが国外追放された経緯などが腑に落ちるようになった。2020/12/01

アリーマ

11
2014年にあったタイのクーデター騒ぎの意味が、全くわからないうちに何年か過ぎていたが、本書を読んでようやく背景が少し理解できた。70年に渡る治世で名君と崇められたプミポン前国王が高齢となり、その後継となる皇太子は三度の離婚などなどの不品行で今ひとつ国民の評判がよろしくなく、かつ王政を影で操る強力な軍部の存在があり、そこにタクシン元首相の覇権と失脚が絡む…と、なんとも盛り沢山な政治体制の国だったのだな。しかも反王室的な発言には強烈な言論弾圧、という実態。まずは大まかな図式が見えて興味深く読んだ。★★★★2018/10/19

makio37

6
数年前にニュースで盛んに報じられていたタイの混迷の内実を知ることができた。「質の低い1500万人の投票より、上質な30万人の意見を尊重せよ」という言葉に、王室に連なる特権層である反タクシン派の差別意識がにじみ出ている。自分たちの支配の範囲内でのみ認められてきた「タイ式民主主義」を破壊する存在として、発展に取り残された東北の民衆に豊かさを与え支持されたタクシンを憎悪した。プミポン国王亡きあとも軍政は「タイ式民主主義」の維持を図り、民主主義に逆行する新憲法を成立させた。タイの今後が気になる。2018/09/25

OjohmbonX

4
タイは民主化すると利権政治になってしまい、それを倒すにはクーデターに頼らざるを得ず、今度は軍政になって民主化から遠ざかる、という「利権政治か軍事政権の2択」を選ばされる状況になっている。その上、抑制的で政治権力から中立であろうとした国王(プミポン)から利己的な国王(ワチラロンコン)に代替わりした結果、国王と軍政が癒着し、軍政が固定化してきている。この背景に、農村人口が多いが格差が大きく稼げていない、だから農村部が大票田になり利権政治を選挙で倒せなくなる、というかなり解決が難しい状況がある。2020/08/24

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