内容説明
古来よりスウェーデン王国下にあったフィンランド。19世紀にロシア帝国下、「大公国」となり広範囲な自治を獲得。ロシア革命、大規模な内戦を経て独立する。第2次世界大戦では、ソ連に侵略され領土割譲。その後ナチ・ドイツに接近し、近親民族の「解放」を唱えソ連に侵攻するが敗退。戦後は巨大な隣国を意識した中立政策を採りつつ、教育、福祉、デザイン、IT産業などで、特異な先進国となった。本書は、「森と湖の国」の苦闘と成功を描く。
目次
序章 フィンランド人の起源―「アジア系」という神話
第1章 スウェーデン王国の辺境―13世紀~19世紀初頭
第2章 ロシア帝国下の「大公国」―19世紀~第一次世界大戦
第3章 揺れる独立国家フィンランド―内戦~1930年代
第4章 二度の対ソ連戦争―第二次世界大戦下、揺れる小国
第5章 苦境下の「中立国」という選択―休戦~東西冷戦期
第6章 西ヨーロッパへの「接近」―ソ連崩壊~21世紀
終章 21世紀、フィンランドという価値
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
109
ムーミン、サウナ、サンタクロースのイメージだったが、本書を読み、ソ連から1917年12月6日独立したので、百年ほどの歴史だということを初めて知った。ヨーロッパで最も長い国境をロシアと接していてNATO加盟を申請したことや、サンナ・マリン首相も先日訪日したので興味を持った。国土は日本より若干小さく、人口は550万人程度。13世紀から600年ほどスウェーデン王国に統治され、19世紀からロシア帝国統治下に置かれた。「東と西の狭間」の国であり、第2次世界大戦でのマンネルヘイムの大フィンランド構想が印象に残る。2022/05/24
kinkin
109
かなり速読みというかいい加減な読み方だったので反省。フィンランドで連想するものはムーミン、デザイン、白夜、サウナそこまでだったので読んだがフィンランドの歴史やスェーデン、ドイツ、ソ連との関連などが詳しく書かれていると思った。サブタイトルは北欧先進国「バルト海の乙女」今まで中立の立場もロシアのウクライナ侵攻でNATO加盟で揺れ動いているからこの本はそんなフィンランドの過去を知ることにも役立つと思う。私にはイギリスよりも料理がまずい国とフランスの大統領に言われたエピソードが面白かった。図書館本2022/05/21
molysk
79
東をスウェーデン、西をロシアに接するフィンランドの歴史は、欧州とロシアの影響を交互に受けるものであった。ナポレオン戦争で、スウェーデン王国からロシア帝国の統治下へ。ロシア帝国崩壊で、独立して欧州に歩み寄る。第二次世界大戦で、独立を守るもソ連の影響を受ける。ソ連崩壊で、再び欧州とのつながりを深める。特筆すべきは冷戦下で、ソ連批判を自制するなどの薄氷の対応によって、民主主義体制の維持に成功する。属国的な政策を「フィンランド化」と揶揄する向きもあるが、この北欧の国家のしたたかさ、しなやかさと理解すべきだろう。2023/01/08
ワッピー
45
「フィンランドの歴史は一口では語れない」と聞いていましたが、この本を読んで納得。学生のころ少しかじったことがあるものの、この本で断片的な知識がやっと面になった気がします。大国に挟まれた小国が独立を勝ち取り、そして現在の地位を築くまで、世界情勢に翻弄され、しぶとく交渉し、譲るところは譲り、しかし国を守り抜く。スウェーデン支配下→ロシア公国時代→独立後の進歩派・保守派、右派・左派、親露派・親独派と政権も目まぐるしく入れ替わりながら、今は自国の安定には世界平和が不可欠のため、大国間の調停役を国是とする。(→)2018/07/14
skunk_c
45
独立100周年の年に出されたフィンランド史の概説書で、このシリーズの最近の例に漏れず、「物語」と呼ぶのがもったいない、しっかりとした記述の本だ。特にロシア・ソ連との関係に時の政治家たちが心を砕いてきた様子が詳しく記されており、北欧諸国の中でもかなり特異なスタンスを取っていた様子が分かる。古い部分では、「アジア系」の俗説をきちんと否定しているところが参考になった。余談だが著者はどうしてもムーミンが好きになれないというが、それでもきちんと紹介しているし、ノキアの盛衰にも触れられている。入門書として最適だろう。2018/05/18
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