内容説明
世界の終わりに現れた炎を操る謎のヒーロー。
全身に鱗状の模様が現れたのち、発火現象を起こして火だるまになり焼死する--人類にとってまったくの未知の疾病が急速に広がり、世界の終わりが迫っていた。感染者隔離施設で看護にあたっていた元学校看護師のハーパーは、妊娠と同時に感染が発覚。錯乱した夫に殺されそうになった彼女は、間一髪のところをキャプテンアメリカの姿をした少女と消防士姿の謎の男〈ファイアマン〉に救われ、迫害された感染者達が身を寄せ合う山中のキャンプに導かれる。外の世界では社会不安が広がり、自警団組織が感染者狩りをしてまわるようになり、やがてハーパーの暮らす弱者たちのコミュニティの中でも不穏な動きが……。
ニューヨークタイムズ・ベストセラー1位、『トランスポーター』の監督ルイ・レテリエによる映画化進行、ベストセラー作家による傑作エンタメ超大作!
(2018年8月発行作品)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
91
本書はヒル版『ザ・スタンド』と云っても過言ではないだろう。但し彼は自分なりのパンデミック&デストピア小説を紡いだのだ。キングの『ザ・スタンド』同様、本書はヒルにとって書かなければならなかった物語なのだ。但し彼が書いたのは『ザ・スタンド』とは表裏一体の物語だ。『ザ・スタンド』は群像劇の様相を呈してはいるが、ほとんど男性中心の物語。ヒルは身重の女性を主人公に据え、母性の強さを強調する。この見事なまでの対比構造はやはりこれがヒルが父親に向けた自分なりの『ザ・スタンド』に対する返信なのだと解釈せずにはいられない。2019/02/03
sin
54
前半、静かな9.11と云った趣で炎に苛まれるパンデミックに向き合う看護師と、彼女に否定的で独善的な伴侶が語られる。躾が充分でない男は厄介だ。やんちゃな大人ならまだ愛嬌があるが、ガキのまま家族を持った男は、妻に子供にとって恐怖でしかない。その軛から逃れて理想のコミュニティーに帰属した安心感も束の間、狂信的な善意の檻に囚われてしまう。形は違えど独善的な正義の押し付けは恐怖以外のなにものでもない。2018/10/27
ぐうぐう
25
謎の疾病「竜鱗病〈ドラゴンスケール〉」に侵された者は、身体から発火し、焼死してしまう。感染はまたたくまに世界規模で広がっていく。ジョー・ヒルは、その序章からして、アクセルを全開に踏み込む。父・キングなら、その発端からじっくりと、じわじわと物語を進めていくだろうに、ヒルは怒涛の展開で一気に世界を破滅へと向かわせるのだ。父と言えばジョー・ヒルは間違いなく、この長編を書くにあたって『ザ・スタンド』を意識している。(つづく)2018/09/07
しましまこ
22
皮膚に鱗状の模様が現れ発火する『竜鱗病』、ドラゴンスケールが蔓延する世界。感染者狩り、秘密のキャンプ…鱗が美しいんだが、話は恐いより、暗いよ~。救いはあるのか、ファイアマン頼むよ、下巻へGO!2018/08/25
わたなべよしお
21
ちょっと気になっていた本だったけど、どうかな?ドラゴンスケール病の正体を暴くプロセスやその利用可能性の展開といったハードな内容を期待していた。しかし、むしろパンデミックの中で人はどう生きるか、が主たるテーマになっている感じだ。勿論、上記のような点も出てくるのだが、上巻後半は特に人権や統治のあり方を問うているのではないか、という感じまでした。あまり期待しないで下巻へ。2024/05/16