内容説明
日本近代の百年の心象風景を、故郷の土俗的背景と遡行する歴史的展望において捉え、戦後世代の切実な体験を文学的形象として結晶化した傑作(『万延元年のフットボール』)。「いまや『洪水』が目前にせまっているという声は、一般的となっている。その時、想像力的に同時代を生きなおす、ということは現実的にはいみがあるであろう」(著者・『洪水はわが魂に及び』)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
32
(『洪水はわが魂に及び』の感想)政治家の秘書だった勇魚(いさな)は、知的障害を持つ息子ジンと核シェルターで暮らしていた。そこに、喬木(たかき)と伊奈子など10代の若者達によって結成されたグループ「自由航海団」と出会うが…。正直、文章が難解で登場人物がたくさん現れるので読むのに苦労した。『洪水はわが魂に及び』が発表されたのが1973年である。前年に連合赤軍による、あさま山荘事件や集団リンチが衝撃を与えていた。『洪水がわが魂に及び』にもこれらに似た描写が登場しているので、影響を受けた可能性はあると思う。2023/07/21
ぐうぐう
27
大江健三郎の代表作『万延元年のフットボール』を読んでまず思うのは、作品から放たれる熱さだ。タイトルが示すように、1860年と1960年という百年の時の隔たりを重ねる、あるいは結び付ける試みが、緻密に計算されているはずなのに、その計算、もしくは論理を軋ませるほどの放熱が迸っていることに圧倒される。とても個人的な設定(障害を持った子供、そして四国の森という舞台等々)が重層的に、多面的に描かれることによって、日本文学という枠を軽々と超えていく物語となっていく。(つづく)2025/04/02
ケイトKATE
27
(万延元年のフットボールの感想)内向的な兄の蜜三郎は、活動的な弟鷹四に誘われて故郷四国の山村に戻る。村に帰ると、二人の上の兄が敗戦直後に襲撃した朝鮮集落の跡にスーパーマーケットができていた。蜜三郎と鷹四は村の史料で、自分の曽祖父が、幕末の万延元年に一揆を起こし、その弟は明治政府に反抗する暴動を起こしていたことを知る。自分の家系が暴動に関わっていたことに感化された鷹四は、村で結成していたフットボールチームメンバーと共にスーパーマーケットを襲撃する。弟の行動に衝撃を受けた蜜三郎は、鷹四に隠された真実を知る。2023/06/26
ブルーツ・リー
7
大江健三郎がノーベル賞を受賞する決め手となった「万永元年のフットボール」が収められた作品。 全盛時を迎えつつある大江健三郎の思想は、どこまで行くのか。 小説全編に、思想や暗喩が散りばめられており、現在の純文学の、どの作品よりも思想が多く書かれている。 そして、その思想たちを直接的に表現するのではなくて、あくまでも暗喩として、小説の技法として表現するから、途方もなく深い思想世界が展開され、一読ではとても全ての思想を読解する事は不可能。 その暗喩たちを解き明かす作業をするだけで、長大な本が1冊できるだろう。2022/01/24
riko
6
・万延元年のフットボール ★★★★☆2023/07/27
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