内容説明
デリバティブや証券化の手法が日進月歩で複雑化していった2000年代初頭、投資家は「格付」しか頼れるものがなくなり、米国ではサブプライム・バブルが発生する。乾慎介は日本のバブルと重ね合わせ、危機感を抱くが、利潤追求に血眼の格付会社は金融業界に追従し、世界を震撼させるリーマンショックを引き起こす。圧巻の大団円!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
幹事検定1級
26
大手の某格付企業をフィクションにしていますが、格付一つで企業の命運を左右させるとすると、その判断は中立公正でなければならないと改めて感じました。経済本としても非常に勉強となる一冊です。2018/04/07
sayan
19
利益相反に直面し葛藤する登場人物の心理と格付け会社の内側描写は生々しい。追求する企業の「在り方」が大きなテーマになる。著者はスワンベーカリーと格付け会社は対極に位置づける。一見、社会的企業に焦点をあてる流れだ。一方で、先月読んだ「資本主義に徳はあるのか(アンドレ・コント)」では「企業は雇用ではなく利益をあげるべき」の議論を思い出す。本書ではスワンベーカリー準備時に「まず何をすべきか?」と問うに、「事業計画書、それも何がいくらでどれだけ売って…」とプラクティカルに即答させる著者のバランス感覚に好感を持った。2019/11/04
さとむ
12
上巻ではバブル崩壊後の金融機関再編の流れが、下巻ではリーマン・ショックの経緯がよくわかった。政治家や経営者など、ごく一部の強欲な者たちの保身や希望的観測が悲劇を呼び込む。「失敗の本質」ここにあり…。ギスギスなりがちな経済小説に、スワンベーカリーなど温かみある挿話を入れ、読み応えある物語に仕立てた作者の力量に感服です。裁判官をテーマにした『法服の王国』もよかったけど、本作も◎。2014/04/28
ヤギ郎
11
小説「格付会社」下巻。リーマン・ショック以後の格付会社の様子がわかる。格付のノッチが一つ上がるか下がるかで莫大なお金が動いている。格付会社が人々の生活を及ぼしかねない事態がやってきた。経済や社会を考えながら、金融マンの生き方を知る一冊である。2020/03/06
唐辛子仮面
6
おもしろかった。金融知識が必要で難しかった。関連知識を勉強してみようと思う。信用の低い債権をまとめて高格付けで売りさばく、リスクは投資家に移転する。あとから見れば破綻は必然だったと思うが、渦中では、同じ阿呆なら踊らな損、だったはず。障がいのある娘をもった登場人物の葛藤は、ただのサラリーマン自分にもの通じるものがあって、生き方を考えさせられる。なんのために働くのか?2016/06/12