内容説明
鉤十字のピッケルが導くのは、絶望か頂か――
第2次世界大戦前、ヒムラーはひとりの兵士に史上初のエベレスト踏破を命じた!
虜になる作品。エベレストの頂(いただき)と登山家の内なる狂気へと読者をいざなう……なんというプロットだろう。見事と言うに尽きる。
――サー・ロバート・スワン(作家・人類初の徒歩による北極点及び南極点踏破者)
1938年。ドイツ猟兵部隊のヨーゼフ・ベッカーは卓越した登山技術を使い、
仲間と共にけわしい山を越え、ユダヤ人の国外逃亡を助けていた。
だが、ある日彼らは捕縛され友人たちは罠にかけられ命を落とす。
ただひとり生き残ったヨーゼフにヒムラーから指令が下る。
それは、ナチスのために人類初のエベレストを制覇しろというものだった――。
現代。ニール・クインは山に魅入られた男だが、
いまでは金のために山岳ガイドをしていた。
今回の仕事は少年冒険家のエベレスト登頂に付き添うことだったが、
少年は亡くなり危うく遭難しかけたところを救出される。
彼に残ったのは山中で発見した、鉤十字が刻まれた1本のピッケルだけだった。
そして、そのピッケルが彼の運命を大きく変えてゆく。
歴史ミステリと山岳小説の頂点!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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50
🌟🌟🌟🌟☆。俺に取ってハズレがない小説ジャンルが3つある。「熊小説」「潜水艦小説」そして「山岳小説」だ。購買意訳が湧く竹書房の凝った装丁を誰かが「ミニ単行本」と評していたけれど上手い例えだと思う。2009年のニール・クインという登山ガイドと1938年のヨーゼフ・ベッカーという軍人の話が同時平衡して進む物語。日本語でそのまま書いたとしか思えない滑らかでとても読みやすい翻訳とエンタメに富んだ著者の筆致力のハイブリッドでページを繰る手が止まらない。分厚いけれど活字も大きめなのでサクサク進む。面白い。2023/07/20
goro@the_booby
50
大仰な題名だけど、これは俄然引き込まれる山岳小説だ。1939年のナチス山岳猟兵ヨーゼフによる極秘エベレスト登頂作戦と2009年エベレスト商業登山で富豪の息子を遭難させてしまったガイドのクインの物語が交互に展開する。ナチスに脅されながら登頂を目指すヨーゼフの境遇、悪徳ツアー会社から狙われる羽目になったクインの話がどこで交わって来るのか目が離せない展開は下巻へ続く。またクインはエベレストへ登るのか?一本の古いピッケルが何を物語るのか興味津々だわ!これは面白い。2022/02/13
Panzer Leader
45
WWⅡ開戦前、卓越した登山技術を駆使してユダヤ人国外逃亡を助けていた山岳猟兵部隊所属のベッカーらはある日ドイツ軍当局に逮捕される。仲間を失い家族を人質に取られた彼はヒムラーより人類未踏のエベレストを踏破せよとの命令を受ける。そして現代、ベテランの山岳ガイドのクインは大富豪の息子のエベレスト登頂を成功させるも無事に下山させることが出来なかった。下山途中鉤十字付ピッケルを手にした事から運命が変転していく。二つの時代を舞台にした山岳冒険小説、いざ後編へ!この題名は見ただけで内容がわかる格調高くて秀逸。 2019/12/26
MatsumotoShuji
3
このタイトルだけでご飯3杯はお替りできるってくらいすごいタイトル。タイトルだけでほぼストーリーが想像できるし、想像しただけで泣けてくる。「鷲は舞い降りた」とか「ベルリン飛行指令」みたいな漢(おとこ)の物語に違いない! 実際冒頭のエベレストのシーンから期待を裏切らないド迫力。ところが……。2018/06/15