内容説明
トリオ同士の笑いの喰い合いに血を流す男たち。天才コンビに隠された哀しくも皮肉な秘密。芸以外に芸人の大切なものを盗んで掟を破った男の末路。浅草ストリップ界を舞台に、笑わすことに命を賭けたが故に自らの人生に泣く喜劇役者たちを、抱腹絶倒のうちにペーソス溢れるタッチで描いた名品六編――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
churu
3
この本を買ったのは17歳の時。つまらなかった。現に「ちっとも面白くありません」と投書が来た話を作者自身がしゃあしゃあと書いてるくらいだ。ところが30年も寝かせて自分がいい歳こいてから読むと突然面白さがわかる。井上ひさしの笑いはブラックな悲哀に裏打ちされている。「狂人の仲間入りをしていった同志たちへの鎮魂歌」のほろ苦さに思わず笑みを浮かべてしまう歳にならないと本当の面白さがわからない。そういう本の典型だろう。作者お得意の辟易するような羅列もリアリティの裏地になっている。巻末の山田洋次の解説がまた味わい深い。2021/10/21