内容説明
濁(にご)り人(びと)の死という予期せぬ事態に立ち会った浪崎碧は、心のバランスを崩していた。穢れを呑むのに必要な銅鏡もひび割れたまま、荒(すさ)んだ生活を送る彼の前に現れたのは、一番信頼を置く従兄・涼。だが彼の振舞いにどこか違和感を抱いた桐島は、鏡を直すべく、碧を連れて鏡師の日名暁溪を訪ねることに。暁溪は碧に理由を告げぬまま、自分の穢れを呑めと要求し――。絶望と救済の第二幕。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
56
碧が背負う運命の重さ。彼が誰かに恋をする日は来るのだろうか? そして涼の独占欲にまみれた愛情は、碧にどのような影響を及ぼすのか。2018/05/10
坂城 弥生
51
鏡師のじいさんが与えたかった物が温かかった。涼が理解者の顔して縛り付けようとしてるみたいで、彼の動きが今後気になるところ。 ひとつ気になったのは作中にLGBTという言葉が出てくるけど完全に理解不足だよ…。デリケートな問題を軽々しく持ち出すのは止めた方がいいと思う。2020/12/08
カナン
41
突如罅割れた鏡と、前回の事件から不安定になる碧。「呑むこと以外は総て些事」。生き神として心の成長を阻害されたまま今まで来てしまった碧が悲しい。現れた従兄の涼も心から碧を弟のように想っているけど、守ることと思考停止させることは違う。その行為が無責任では無いことがもどかしく、でも何より今作は鏡師暁渓の生き様に涙が。伽藍堂の碧の中に己の人生の記憶を預けていくこと。金継ぎが大好きな孫との思い出だけきつく抱いて、血を継ぎ命を継ぎ、今生きる者へ記憶を託す。呑んだ全てが汚い物では無いのだと、どうか君に伝わりますように。2019/11/05
ぽろん
39
全巻がなかなか思い出せなくて、今巻に入り込むのに時間がかかったけど、鏡師の家に滞在してからのくだりは、本当に良かった。それだけに、本家の涼の存在が不気味です。2018/05/20
はな
36
割れた鏡を直してもらうため鏡師のもとへ出向いていく話。穢れを飲むということ、カカノムモノとして幼いころからそうするように植え付けられた心が、暁渓の関りによってほどけていく様が何とも言えず。癒しというものは無償の愛なのかなと思えました。カカノムモノとしての運命は変えられないけれど、誰かしらが支えになれれば違うのだということがよくわかった気がしました。2018/10/31