内容説明
剃髪の剣豪、高松孝道に自分の脆さを指摘された剛は、迷いを振り払うべく真剣の孝道に勝負を挑む。その頃、剛を巡る松任組と劉栄徳の対立は松原弘一と宋陵元の決闘に発展。経験の乏しい弘一の勝算は如何に……。一方、孝道の元を辞し沖縄に向かった剛は、偶然出会った強靱な老空手家とのやりとりの中で、大事な何かを掴み取る。時は満ちた。横浜では劉栄徳との再戦が待つ! シリーズ完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chiru
107
「一人の旅人があった」…から始まる三国志の時代以来、自衛を目的とする究極の技として生み出されたのが武術。剛の”強くなりたい”の一念はそれと同じ。一方、傭兵時代に闘いの虚しさを知った鉢須賀は、”原石”(剛) と出遭い、真の強さを追求する。限られた人生を研磨して生き抜く武術者たち、そして燃え尽きる勇者たちも__。訪ねたい人間がたくさんいた。朝日の中に誰かが立っている。それが誰かすぐわかった。剛はその男と話したくなった。劉永徳との闘いのことを。剛が今、考えていることを…。剛は男に向かって 夢中で駆け出していた✨2022/12/26
10$の恋
43
道場破りを続けながら強さを求めて旅をする剛、達観した幾人かの武術家と巡り会い、強烈な違和感を覚える。『なぜ勝てない?技は僕がまさってるはず…』。そして最終的に行き着いた「沖縄空手」で人間の生き方を知る。乗り越えるべきは「己」だったのだ。手数優先の近代武道と生きるための精神武道の大きな違い、「心技体」の"心"こそ全ての"核"。敢えて人間性を封印してきた暴力だけの生い立ち、その生き方が移ろい始める。人間は孤独ではない、剛はやっと孤独の殻を破り始めた_。私の心を沸騰させ続けた『孤拳伝』全5巻、愛蔵の書となった。2022/12/26
keiトモニ
43
劉栄徳師…“正しい訓練を積めばいずれは悟ることができる…正しい訓練?…そう、剛は多くの優秀な師に出会ったに違いない”←ほんと多くの師に出会ったな。もうしんどいよ。それなのに“訊ねたい人間はたくさんいた、急ぐことはない。旅は始まったばかり…” だってよ。又旅出るのか。剛よ、もうええ加減にせんかい!しかし北京からきた軍人崩れの流氓周衛民…習金平の息子じゃないのか。何が“この周衛民さまが直々に取り立てに来てやった”だ。何が“安全を提供している”じゃ!現に今も、返還後の香港をぐっと締めつけてるくせに、よく言うよ。2018/07/11
PEN-F
39
長かったけど全5巻読み終えました。何が正しくて何が間違っているのかはその人次第だから一概にはなんとも言えないが、若い人が自分にとって正しいと思える方向に人生を歩み始めるのはちょっと嬉しい。2022/05/19
ヤジマ
34
主観点 9.6/10 怒涛の最終章を読み終えて押し寄せる感慨。達成感よりも喪失感が勝る読後となった。700近い項数の中で戦士たちは互いの道を着実に歩み、ある者は天に召され、限られた一握りの人間だけが武道の境地に到達する。剛が沖縄で屋良老人との生活の中で習得した歩法。その無遠慮な歩法から繰り出される封殺は正に天衣無縫。脅威的であり、爽快だった。そしてやはり最後はあの人物との一騎打ち。境地に達した者同士の対峙はもはや戦いにすらならない。著者の考える本物の強さが如実に描かれていた。今野先生、続編を切望します。2023/06/18