内容説明
宗陵元との深夜の死闘を演じた朝丘剛は、熱も冷めやらぬまま神戸を後にする。劉栄徳、由佐肇――二人の達人を破るべく武者修行を続ける剛。漂泊の星の下に生まれた男に安住の地はない。岡山に美作竹上流の本拠を訪ねた剛は鉢須賀了太に出くわす。偶然の再会にライバルたちの血は滾る。『修拳会館』で心の技を磨いた鉢須賀に道場破り同然の試合を申し込む剛。かつて闇試合で激闘を繰り広げた二人に決戦の幕が切って落とされた! 〈解説〉吉野 仁
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chiru
103
強者と見れば野生の狼のように噛み付き、彼らの「命」にすら興味を持たない剛。逃げ道を塞がれ一人また一人と消えていく屈強な男たち。そんなある日、剛は初めて女性の肌の温もりを知る。 そして「宿敵」鉢須賀との再会でまたもや拳を交え、まさかの無傷の敗北を喫した。(何かが違う…)。心身ともに彷徨う剛、彼の本能は宮本武蔵ゆかりの熊本に辿り着かせる。明日死んでも、後悔のない人生を歩みたい。そして、挑戦を辞めたら必ずそこで終わる。生きる意味を自分自身にも問う最高傑作!剛の心に欠如したものとは何か?最終巻が楽しみ過ぎる!2022/11/23
PEN-F
41
何も考えず、何も悩みがないというのは、死人だ。人は生きているからこそ悩む。悩んでいる姿は、そのまま生きる姿でもある。生きているかぎり様々な悩みが常につきまとう。悩みからは逃げられない。逃げれば追ってくるのが理。向き合うしかないということかな。2020/11/22
10$の恋
38
第4巻、ますます剛の特異性に惹かれる私。東洋の魔窟・香港九龍、そこで育った孤児の剛が抱える無学と無知のコンプレックスが試練を与え続ける。女体を知ったことも心に異種の感情を芽生えさせた。さらなる強さを求め、西日本各地への行脚、そして宮本武蔵の終焉地「熊本」に辿り着く。一方、宿命的武芸者達は各々違った鍛錬で高みを悟りだす。西洋的格闘技と東洋武術は似て非なるもの。では道はどこにあるのか?頂上はひとつ、だが登る道は其々違う。真の「強さ」とは何か?剛を必要とする香港の黒社会と横浜ヤクザ双方の詭謀にも目が離せない。2022/11/22
ヤジマ
34
主観点 9.2/10 強さを求めて流浪する剛。その先々で味わうのは苦味の伴う敗北の味だった。剛の成長。蜂須賀の成長。マリアと松原の成長。それらが相乗的に物語の幹を成し、深みと面白さを際限なしに醸造する。もはや脅威の物語と思う。我が子の成長を見るのとは流石に違うが、誰かが経験の中で何かを得て成長する様を見届けるのは、ある種のカタルシスに直結するものと思う。局所的な成長ではなく長期的な成長への情動。ドラゴンボールやナルトなどの漫画で体感することはあるが、小説では珍しいのではないだろうか。ついに物語は最終章へ。2023/06/13
活字スキー
20
【こんな気持ちは初めてだった。彼は、友人も恋人も必要ないと考えていた。肉親さえ必要なかったのだ】大きな挫折を機として新たな次元へと踏み込んだ鉢須賀さんがキレイなジャイアンに見えてくる四巻。龍門、春秋篇。登場した頃は完全にイッちゃってる系のヤバい人だったのに……いやはや、これが縁とか天命というものの不思議な力か。今後も「リョータのいいところ、またひとつみーっけ♪」とか言いながら温かく見守りたい。かたや、戦いを求めれば求めるほど迷いに囚われるようなツヨシ、しっかりしなさい!2018/03/29