内容説明
ロンドンでの難交渉を終え、全権団は帰国した。しかし、条約の内容を受け入れられない軍令部は、統帥権の独立を楯に批准に反抗。輿論は二分し、議会での論戦も混迷の一途を辿るばかり。土壇場での条約破棄を阻止するため、雑賀ら政府の面々は、軍人、枢密院、そして輿論に対して瀬戸際の攻防で対峙する――。史実の中に浮かぶドラマを、精緻かつ情熱的に描ききった傑作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
TATA
33
英米との交渉を終え、ロンドン海軍軍縮条約批准に向け国内での交渉に。海軍の残党を向こうに回し数多の苦難をものともせず最後は枢密院も全面賛成に。文中にもあったがおそらくこれが明治維新後文民が初めて軍部を屈服させた出来事。これが帝国主義終焉の呼び水となればよかったが、歴史はその後浜口首相東京駅遭難、515、226と悲惨な方向へ。こういった作品を通じて外交官として官僚として痛快な仕事ができると思う若い人が増えればいいけどね。2018/09/08
やすべえ
13
答えは出ないが凄く考えさせられた。もしは考えても仕方がないがそれでももし政治主導の国際協調が続けられてれば関東軍の暴走などはなかったか?戦争は起こらなかったか?極端にいえば核兵器も開発されなかった?個人的には太平洋戦争は日本だけが原因とは思えないがあの時代でも信念を持って最善を尽くし国を思い平和を願った人がいた事は忘れてはいけない。2018/04/08
keisuke
8
面白かった。下巻はほとんどが「馬鹿馬鹿しい」と思う事の連続やったけど、実際そうやったんやろうし、今の日本が違うのかといえばこれより馬鹿馬鹿しいかもしれない。軍縮条約ってあったかなあくらいしか思わず読んだけど、とても面白かった。2018/04/13
ryohey_novels
7
下巻は統帥権問題が中心で非常に動きが鈍く、読むのに一苦労した。国防という論点を離れ、自陣の利権・立場を守るための論争となっていく政治家たちの動きは今と大差ないと半ば呆れながらも実感した。その中で浜口雄幸の強い信念はずば抜けて輝いていた。まさに命がけの行動であり、非常にカッコ良い。流石はライオン宰相という感じ。死後すぐに、軍部の強権化を許す時代の流れを見ると、浜口首相こそが最後の要だったことがよく分かった。結局、ロンドン海軍軍縮条約とは何だったのか。雑賀の嘆きが聞こえて来るようだ。2020/09/11
熱東風(あちこち)
5
面白かった。/加藤寛治、東郷平八郎、伊東巳代治…名だたる強敵を相手に粘り強く交渉し、条約締結の批准を得た浜口雄幸という政治家はやはり只者ではない。浜口の強気に押された伊東巳代治の手のひら返しには唖然とさせられ、笑いすら催される。保身に走る醜い政治家の見本といったところか。/歴史のIFだが、浜口が襲撃されて重体に陥らなかったら、世界恐慌が起こらなかったら、軍部の暴走は抑えられただろうか…想像は止まらない。/近代史の小説で久々に読み応えのある作品に出合えた。2018/04/03
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- いちまい酒場 講談社文庫




