内容説明
デビュー前から、海北友松という男を書きたかった――葉室麟。遅咲きの著者による50作目の記念すべき小説は、武人の魂を持ち続けた絵師を描く本作『墨龍賦』。武士の家に生まれながらも寺に入れられ、絵師になった友松だが、若き明智光秀の側近・斎藤内蔵助利三と出会い、友情を育んでいく。そんな折、近江浅井家が織田信長に滅ぼされ、浅井家家臣の海北家も滅亡する。そして本能寺の変――。友松は、海北家再興を願いつつ、命を落とした友・内蔵助のために何ができるか、思い悩む。迷いながらも自分が生きる道を模索し続け、晩年に答えを見出し、建仁寺の「雲龍図」をはじめ、次々と名作を生み出していった海北友松。狩野永徳、長谷川等伯に続き、桃山時代最後の巨匠となった男の起伏に富んだ人生を描く歴史長編。4月11日から京都国立博物館で友松の大回顧展が開かれることで早くも話題だが、本能寺の変の舞台裏についても、著者自身の推理が端々に光っており、絵師の目から見た戦国絵巻としても愉しめる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナイスネイチャ
176
図書館本。戦国時代に狩野派として生きた絵師「海北友松」その時代に隆盛を極めた狩野永徳を織田信長に見立てて翻弄されながらも信じた道を進んでいく。絵師というよりは一武将の生涯でもう少し水墨画のところが欲しかったかな?2017/03/10
starbro
161
葉室麟は、新作中心に読んでいる作家です。本作は著者記念の50作目ということもあり、新機軸のような気がします。最近、歴史上の偉大な絵師を描く作家が増えていますが、本作もその系統です。本作の主人公は、海北友松だと思いますが、実は安国寺恵瓊の物語ではないかと考えているのは、私だけでしょうか?いずれにしても安国寺恵瓊の方が、ずっと目立っていました。2017/03/03
シナモン
125
「葉室麟 洛中洛外をゆく」繋がりで読んでみた。戦国時代を生きた絵師、海北友松の物語。狩野永徳、織田信長、明智光秀など歴史の表舞台に出てくる人たちとこんなにも交流があったんだな。いつもとは違った側面から歴史を見ている感じで面白かった。絵師として生きるか、還俗して武功を立てるか悩んだ末に絵師として生きた友松。建仁寺襖絵の雲龍図に込められた思いも良く分かった。いつかじっくりと見てみたい。2022/04/07
いつでも母さん
111
何度も葉室作品は卒業と思いつつ、こうして又、手にしてしまう。今一つ突き抜ける『何か』が読みたくはあったが、本能寺の変が絡んで最後まで読んでしまった。海北友松の名は知らない。狩野派は歴史で習った覚えはある(汗)春日局の語りを通して自分の父の出自を知り家を再興したその息子・海北友雪。武と僧、そして絵の狭間に揺れる父・友松がなんとも・・しかし友の亡骸を奪還し、絵師として自ら為すべきことを見出してからの姿は憑き物が落ちたかのようで好ましく感じた。そんな思いで鑑賞するのも一考かなと・・2017/02/23
あすなろ
102
海北友松と安国寺恵瓊。宗教と絵筆と武士と戦国の混沌。それらを雲竜に投写して表紙の絵を読者として見ることとなる。なかなか興味深い一冊であった。また信長と帰蝶、それを取り巻く人物の描き方や解釈についても地元の人間としても興味深かった。最近、葉室氏の作品には、個人的に期待されて軽い失望を抱くこと多かった中、この作品は良かった。それでも所々、軽い失望はあるのであるが。2017/04/16
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