内容説明
短編出世作と不倫の性を描いた代表長編小説。
「冥府山水図」は己の絵の完成に生涯を賭した老画家の鬼気迫る執念と、到達点のない芸術の魔性を巧みに描き、“芥川の再来”とまで評された著者出世作の短篇。
東京山の手を舞台にした、広大な敷地に住む明治生まれの老父母、大正生まれの長男夫妻、昭和生まれの次男夫妻と、世代の異なる一族が繰り広げる赤裸々な人間模様を描いた「箱庭」は、一見平和で裕福に見える裏側に蠢く、性の衝動や空疎な関係性を生々しく描いた長篇意欲作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソーダポップ
36
己の絵の完成に生涯を賭した画家の鬼気迫る執念を描いた「冥府山水図」。世代の異なる一族が繰り広げる悲喜劇。箱庭のようにせまく、息苦しくそのくせ形だけは整っている家族がゆっくりと静かに崩壊してゆく姿を描いた「箱庭」。両作とも、荒涼とした心の風景を描く力作でした。2021/02/23
しょうゆ
5
「冥府山水図」はセンター試験に出題されていたので知っていた。短い作品ですが、芸術の奥深さ、自然に対する底の知れない畏怖に似た感情が格調高い雰囲気で綴られている。いかにも文学って感じがして好きです。「箱庭」は親戚や家族の間に起こる諍いや駆け引きが面白かった。何気ない日常でも水面下ではドロドロしてるっていうのがリアル。タイトルの付け方が秀逸ですね。2018/05/01