創元SF文庫<br> ハロー、アメリカ

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創元SF文庫
ハロー、アメリカ

  • ISBN:9784488629168

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内容説明

エネルギー問題が引金となった経済破綻により、21世紀初頭、アメリカ合衆国は崩壊し放棄され、さらには世界的な気候制御の失敗によって砂漠と化した。そして1世紀が過ぎたある日、蒸気船に乗った小規模な探険隊がイギリスを出港し、ニューヨークに上陸する。密航した21歳の青年は、自分がこの国の新しい支配者、第45代大統領となることを夢見るが……。わずかな残存者のいる諸都市を探訪し、アメリカの夢と悪夢の残滓に邂逅した探険隊の記録を通じて、予言者バラードが辛辣に描き出す強烈な未来像!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

96
従来のバラードならアメリカが静かに滅びていく状況と、そこから逃れようとする人びとのドラマにしただろう。あえてその1世紀後を舞台にしたのは、昔から唱えられてきたアメリカンドリームという虚妄が消失したディストピア世界を描きたかったからか。殺人を繰り返したカルト宗教の教祖と同名の男が大統領を名乗ってラスベガスで若者を支配し、歴代大統領たちのアンドロイドを操って各地にミサイル攻撃をかける有様はシュールだが、ここには破滅三部作にある謎めいた美しさはない。伝統的SFの素材をバラード流に料理しようとして失敗したようだ。2022/02/04

HANA

61
21世紀初頭、環境の変化により打ち捨てられた北アメリカ。そこへと旅立った主人公を描いた一冊。「インディアン」の意味が逆転していたり、彼らの名がアメリカの会社やブランドだったりと皮肉も交えつつ、読者に常に「アメリカとは何か」を突き付けているように感じる。無論それとは別に、目的地へ至るロードノベルとしても面白いんだが。あとアメリカ大統領の台詞が現実とリンクしていたり、途中コッポラの某映画を思い出したりもする。やっぱり好むと好まざるとに関わらず、アメリカというのは現代に生きる誰もが心の中に抱え込む何かだと思う。2018/08/02

タカラ~ム

19
#はじめての海外文学 vol.4で岡和田晃さんが推薦している作品。SFはあまり読み慣れていないので不安もあったが、読んでみたら楽しめた。エネルギー資源の枯渇でアメリカは衰退し崩壊する。それから1世紀後、イギリスから大西洋を渡って蒸気船アポロ号がマンハッタン島に到着する場面から始まる物語は、荒廃した世界が見せつける人間の狂気で溢れている。登場人物たちはそれぞれに狂気をはらんでいて、その狂気が怖さよりも滑稽さを感じさせる。2019/04/05

かとめくん

19
砂漠化が進み廃墟と化したアメリカに、1世紀ぶりに探検隊が上陸する。乗組員の様々な思惑を載せて。かつて栄華を誇ったアメリカにあこがれる青年は大陸横断のメンバーに志願し、繁栄の残滓を辿るのだが…。アメリカを滅びた国として描くことで表現しようとしたと思うけど、たしかに当時のアメリカって、日本も含めこんな感じで捉えてたんだと思う。今は違うけどね。2018/08/06

ネムル

12
バラードによる三流長編ではあるが、アメリカがアメリカの姿を追い求め続ける限りは、この作品も読まれ続ける価値を有していくのだろう。2018/06/23

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