内容説明
家康生母・於大の方に連なる名門水野家は、当主の乱心による江戸城松之廊下での刃傷事件で、譜代大名から旗本へ転落する。その立て直しに生涯を捧げることになった二人。没落した「せつなさ」に耐えながら一心に勤め上げ大名復帰を果たした御曹司忠友と、旗本から婿養子に入り「したたかさ」を武器に将軍側近かつ老中として権勢を誇るまでに家格を上げた忠成。二代にわたる水野家復活の道程を、史料を基に活写する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
穀雨
4
一旦旗本に転落してしまった水野家を立て直した、忠友・忠成2代の評伝。本人たちが何も書き残さなかったため史料が乏しく、断片的な描写になってしまうが、それでも人となりがわかるエピソードを組み合わせることで生き生きと人物像が描かれていた。忠成について、著者は「きめ細やかな観察眼を備えた有能な官僚」と積極的に評価しているが、近藤重蔵を失脚させたことからも、従来の悪徳政治家のイメージが個人的には拭いきれなかった。2022/01/26
はしめ
1
享保(暴れん坊将軍1700年頃)から文化文政(1800年頃)に江戸幕府で要職についた水野家のエピソード。島耕作的エリートサラリーマン。2022/07/17
オールド・ボリシェビク
1
家康の生母の家系である水野家は、譜代の名門なのだが、ある代が江戸城・松の廊下で刃傷事件を起こしてしまった。そこで改易となるのだが、後の代が頑張り抜いて復権し、老中にまでなるのである。水野忠友とその婿である忠成に光を当て、名門復活と幕府権力中心の絵図を明らかにして面白い。歴史への、一アプローチとして、妙に専門的にならず、素人でも楽しめる叙述が秀逸。なかなかの著者である。2021/09/05
於千代
0
家康の母の家系である水野家。刃傷事件を起こし改易となった水野家がどのように復活し、老中にまで至ったのか。水野忠友・忠成にスポットを当て紐解いていく。人物を中心に見ていくため、エピソードとして面白かった。また、本筋ではないが、家斉の子女の受け入れを巡るエピソードも興味深かった。伝手を辿ってあの手この手で何とか婚姻を無かったことにしようとするなど、疫病神のような扱いである。2020/12/29
バルジ
0
一般的な知名度がほぼ皆無の水野忠友・忠成の足跡を同時代の史料から描き出す。 当人の書簡や日記が無いため、どうしても推測が多くなっているが、真面目に職務に取り組む忠友と清濁併せのむ「異能」の政治家忠成の対照的な姿が面白い。 身分制については保守的な考えの忠成だが、その他の部分を見るにその合理的思考は近代の政治家の姿に近いものを感じた。2018/09/30