内容説明
歌舞伎町でセキュリティをするコウは、最強でしたたかな女。風俗店〈天使と薔薇〉から逃げた淫乱な美少女ユコを連れ戻しに向かった先で、敵対する殺し屋たちから狙われる。窮地を躱したコウとユコは、海辺の団地に潜伏する。闇の世界から抜け出し、別人に生まれ変わった危ない女とやっかいな女の奇妙な共同生活。悲惨な人生を歩んできた二人に、安息の日々は続くのか――。圧倒的熱量を放つ、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
128
著者初読み、第21回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。HIV、虐待、裏社会、ミステリーとごちゃ混ぜ感てんこ盛りだが、デビュー作らしい全力投球感に満ちた著者の本気度や情熱が感じられる作品だと思いました。粗削りな部分がこなれてくれば、魅力的なハードボイルド作家として十分に期待できるんじゃないかと思います。と、かなり上から目線ですが、今後も楽しみに追っていきたい作家さんです。2019/06/05
★Masako★
102
★★★★+ 読了後しばらく興奮が醒めずにいた。なんて熱く、苦しく、そして哀しいハードボイルドなんだ!歌舞伎町の風俗店でセキュリティをしているコウと風俗嬢のユコ。二人は想像を絶する辛い過去を背負って闇の世界を生き抜いてきた。反目し合いながらも、何故か逃亡生活を送ることになった二人。潜伏先での穏やかな日々。住民との温かな交流、淡い恋。でも闇は容赦なく追いかけてくる。終盤の怒涛の展開と真相に驚愕する。護りたい者の為に命をかけた二人に、涙が止まらない。その姿はまるで、沸き立つ様に咲き潔く散っていく桜のようだった。2019/04/22
あも
102
憤りも勿論あるが、それより哀しさを感じた。女性の女性による女性のためのハードボイルド。冒頭、風俗店の女セキュリティ・コウがいきなりの殺し合いを演じ、訳も分からぬままに風俗嬢のユコと2人逃亡生活が始まる。出てくる男出てくる男、クズ、カス、ゴミで何だか同じ男として肩身が狭くなってくる…。逃亡生活の中で語られる過去と現在の危うい穏やかさはどこか甘やかで…からの怒濤の終盤!って、お前!お前か!?お前もかーーー!!全力の報復を期待しつつも穏やかであらんことを祈ってしまうのは主人公が女性だからか。色々考えてしまった。2019/02/20
おたけஐ೨💕🥒🍅レビューはボチボチと…
99
84/100点 第21回 日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。初読みの作家さんですが、なかなかスピード感のある展開と、よく考えられている構成で、思っていた以上に面白く読めました。ただ最後のユコの状況が切なすぎて、ああする必要があるのかなと個人的には感じました。それと父親と対決に行くようなラストになっていますが、24年経った今更?と思ってしまいました。その辺がスッキリしなくて、モヤモヤとした読後感になってしまった点が残念です。2018/03/27
モルク
97
風俗店のセキュリティコウとその店から逃亡した美少女風俗孃ユコはとんでもない事件に巻き込まれ逃避行を続ける。姉妹として団地に住み一般人にまぎれこみながら二人の平穏な生活を望んでいたが…。追っ手が迫り、裏切り、二人の絆、暴力シーンと止まるところを知らない。そして怒濤のラスト、結末に余韻を残しながら終わる。桜子に祈りをこめながら…。切れ味のいいハードボイルドミステリー、これがデビュー作だそうだが、圧倒された。2018/12/06