内容説明
日本滞在が長くなるにつれ、私は日本人からいつも似たような問いを投げかけられることに疑問を覚え始め……(「日本人の質問」)。表題作のほか、新鮮な感覚で捉えた日本、日本文化についてのエッセイ集。名著が初版から35年を経て待望の初文庫化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
penguin-blue
50
読みだして程なく、キーン氏の訃報に接することとなった。35年前に書かれたとは思えない程古さをみじんも感じさせない。海外旅行者が街にあふれるようになった今でも、「何しに日本へ?」相変わらずTVでは似たような質問が繰り返されている。日本人の質問は好奇心というより先に質問をすることで、それ以上難しいことを聞かれるのを封じる、先制攻撃のような意味合いが強いと思う。まあ、和歌を語り日記文学を能を空海を自在に語るキーン氏にそんな小細工はそもそも通用しないのだけれど。変わらず日本に愛を傾けて頂いたことに心から感謝。2019/03/01
to boy
29
1980年代の新聞、雑誌などへの投稿文をまとめたもの。30年以上前の日本人論ですが現代でも充分に通用する内容。庭園など西洋では左右対称の幾何学的なものが好まれるが、日本では非対称、空間が大事であることなどなるほどと思いました。日本は特殊な文化、言語なので外国人には理解できないという思い込みを改め、日本を理解してもらう努力が大事だと言っています。文章全体に日本への愛情が感じられてキーンさんらしい温かい内容です。2018/02/15
彼岸花
23
キーンさんが亡くなられ、追悼の意味で読みました。東日本大震災後、日本国籍を取得、第2の人生という時に、残念でなりません。日本文学は、古典から現代文学まで幅広く、仏教に関しては、空海に言及するため、東南アジアの果てまで掘り下げて書かれています。「もののあはれ」のように、特殊性の中にある普遍性は、通常外国人には理解不能、私たちが普段、認識することも少ない課題を、確実に読み取り、探究されました。このような美意識や価値観は、日本人として忘れないようにしたい伝統です。愛国心や誇りを持って生きる道の尊さを知りました。2019/03/07
奏市
19
だいたい40年ぐらい前に書かれたエッセイ。日本古典文学の特質とか日米関係の歴史とか仏教と国民性とか様々な内容からなるが、一番面白かったのは表題の日本人の質問。お決まりで失礼な質問の数々に当時の著者が憤慨している感じが楽しい。穿った見方で核心をつく。日本の生活を不便に思わないかの質問に対し、そう不便に感じないとし、「むしろ何らかの理由で日本社会にうまく溶け込めない日本人の方が同情に値するだろう」と。自分の生まれた次の日に書かれたエッセイがあった。おしいっ。当時よりは日本と外国の相互理解は進んだと思いたい。2021/03/06
ザビ
14
外人には日本語はムリ、刺し身もムリ…「このような迷信や、外国人でも理解できることを否定するような態度は相互理解の邪魔になる」当時、日本人が思う日本らしさといえば神社や懐石料理などで、日本文化や伝統を理解できない異人との共生はムリ的な思い込みは確かに強かった。今の日本は、アニメ、コンビニ(便利)、安全清潔…など、日本人が考えてきた日本らしさPRとはズレたものも海外から注目され、食事も寿司に限らず普段食全般が健康的で美味しいと驚かれる。ってことは、日本は内向き思考で外へのプレゼンが不得手ってことなのかな。2024/03/19
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