内容説明
『生きるための食事でなく、ひと時の幸福のための菓子を作る』
江戸の吉原一、料理が美味いと評判の中見世・美角屋。そこで働く“菓子専門の料理番”太佑は、日々訪れる客や遊女達のために菓子を作っていた。しかしある日、幼馴染で見世一番の花魁・朝露が全く太佑の菓子を食べていないことを知り……。
切ない想いを秘め、懸命に生きる人々にひとくちの“夢”を届ける――とある料理番の、心温まる人情物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
68
特に夜の描写に独特の色気や空気のゆらめきのようなものが感じられ、この方はこれから書いていかれる方だなと思った。吉原の哀しさも江戸時代の菓子についてもよく取材されていて、不安定なところなく読めた。これからの作品を楽しみにしております。2018/02/25
野のこ
66
時代小説は苦手ですがこれは読みやすく、かつお菓子とほっこりするお話。あとがきを読んで好みが著者の江中さんと同じで嬉しい。そうそう季節のお花もさりげなく良かったし、個性の光る登場人物はイメージが膨らんで楽しかった。小さな幸せのきっかけになるお菓子、特にふっくらカステイラが美味しそうでした。馴染みの深い朝露には美味しいものは美味しいって昔のように笑ってほしい。朝露が大好きな大佑の菓子を食べない理由が切なかったです。人の気持ちも自分の気持ちも難しい。次作へ2019/11/20
はるぽん🐰道草中🐱
41
この本は この表紙じゃなかったら きっと手にとることはなかったかも。(イケメンです✧*)久しぶりの時代小説、吉原の美角屋で和菓子専門料理番として働く太佑。吉原百菓ひとくちの夢〜花魁の朝露のため、そして「生きるための食事ではなく、ひと時の幸福のための菓子を作る」物語。吉原の中でありながら表紙のように淡い読み心地。転と結がよかった。食いしん坊の私としては、お菓子の描写は薄口だったかな。2018/04/06
青蓮
40
吉原一料理がうまいと評判の美角屋で働く菓子専門の料理番・太佑を主人公とした人情モノです。泣いて笑ってまた頑張れる。ハートフルな時代小説。心が疲れた時に良いかも。太佑さん、心根が良いですね。2019/06/09
ぽぽ♪
39
江中さん、初読みです。最後まで読んでタイトルの意味に納得です。恋愛感情ではないけど、太佑と朝露の関係が良かったです。太佑のお菓子を食べない理由。切なかったです…ほんわか温かい読了感でした。2018/06/08