内容説明
時は幕末、ペリー来航の直後の品川宿。落語好きが高じ寄席の開業を思い立った大工の棟梁・秀八。腕はいいが、けんかっ早い。駆け落ちして一緒になったおえいは団子屋を切り盛りするいい女房だ。芸人の確保に苦労するも、寄席の建物は順調に出来上がってきていた。そんな中、突然お城の公方さまが――。秀八の清洲亭は無事柿落しができるのか? 笑いあり涙あり、人情たっぷりの時代小説、開幕!
目次
第一話 寄席はいつ開く?
第二話 寄席がとっても辛いから
第三話 寄席は涙かため息か
特別付録 寄席まわりの言葉たち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
171
とんでもなく面白そうなシリーズ物が誕生したかも…!大工さんが寄席を開業してすったもんだのする話ですが、落語に詳しくなくても大丈夫です。落語家の話ではなく、席亭の秀八が主人公。でてくる登場人物も個性豊富で、最後はウルウルしちゃいました。秀八と支える女房のおえいの夫婦仲は、見習いたいですね。そして今回は落語家の天狗がなんとも言えない味のある人物でした。秀八を寄席の営業で、どう成長するのか、登場する芸人も、どんな芸人がでてくるのか、とにかく次作が楽しみになる作品でした。2018/05/18
fwhd8325
78
落語ブームだと言います。講談も浪曲にも再び光が射しています。寄席は、演じる者も、見に来る者も味わい深いと思います。ふとしたきっかけで知った作品なのですが、なかなか楽しい。落語の噺が随所に感じられる。それが物語の骨格をなしているような押しつけがましいところがないから、もっと楽しめる。2019/04/01
やま
72
大工の棟梁の秀八が、江戸四宿のひとつ品川宿で己が普請した建物で寄席を席亭(経営者)として、大工と席亭との2足の草鞋を履いて活躍する人情物語です。秀八35才が普請した寄席を「清洲亭」と名付けて、始めようとしたら将軍様がお亡くなりになった。江戸は、歌舞伎音曲は停止になった。寄席を普請した材木代の未払いが20両残っているので、本業の大工をと思ったら、こちらも派手なことを慎むとして工事がない。出だしに躓いた清洲亭は、これからどうなるのか。→2022/10/01
ポチ
66
寄席を作った大工の棟梁とその女将さんを中心にして、あれやこれやの話しを人情味たっぷりに綴っています。落語はほとんど知りませんが一気読みでした。楽しめる一冊です。2018/06/17
アルピニア
62
幕末の江戸品川宿で寄席を営む大工の棟梁夫婦の奮闘を描いた物語。奥山さんの作品は3作目だが、江戸時代の庶民の暮らしを歴史的事件、身内のゴタゴタ、ホロリとする人情を交えてテンポよく描く今作はちょっと意外。主人公の秀八さんとおえいさんは、お互いを思いやるステキな夫婦。各話の題名も何だかくすっと笑える。登場する噺を知らなくても充分楽しいけれど、知っていると作者の仕掛けが分かってもっともっと楽しめるのだろうと思うと元根多も知りたくなる。シリーズものになるとのこと、気になる伏線もいろいろ張られていて、続刊が楽しみ。2018/06/28