内容説明
『九月、東京の路上で』が反響を呼んだ新鋭による初の本格的評伝。大陸浪人として括られてきた宮崎滔天の波乱の軌跡を世界革命への志において全く新しく甦らせ、アジアと近代を問いなおす力篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
15
義侠の人、夢想的なアジア主義者とのキャラが先行しがちな宮崎滔天の生涯を辿りながら、その思想の奥深くに切り込んだ意欲作。帝国主義を廃絶して平和を実現する世界革命と、貧困を一掃する社会革命の実現が根底にある事が見て取れる。中国革命へのコミットの姿勢が最後までブレなかった所や、朝鮮・台湾の解放を最後まで主張した所は、同時代のアジア主義者や活動家が徐々に侵略者の顔を覗かせ始めたのとは対象的。又、あの時代にあって天皇崇拝や国家主義から自由であった面も、稀有な人物像を際立たせている。著者の熱い思い入れに好感。2017/06/14
あまたあるほし
4
いまどき、滔天の理想と挫折をこの範囲に抑えてしまって良いのかは疑問。例えば、侵略国家に堕落したいまの中国と宮崎滔天の位置付けなどは改めて考察すべきだったのではないか。2017/08/04