内容説明
肥後椿が咲き乱れる「百椿庵」。江戸時代からあるという、その屋敷には、若い女性の幽霊が出ると噂があった。その家で独り暮らすことになった新進小説家の青年井納惇(じゅん)は、ある夜、突然出現した着物姿の美少女に魅せられる。「つばき」と名乗る娘は、なんと江戸時代から来たらしい…。熊本を舞台に一四〇年という時間を超えて、惹かれあう二人の未来は? 傑作タイムトラベル・ロマンス。[解説:脚本・演出家 成井豊]
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いたろう
63
今度、熊本に行くので、その前に何か熊本が舞台の小説を読んでみようと思って手に取った本。著者は、熊本生まれ、熊本在住だったのか。舞台は、現代と江戸時代末期の熊本。両時代を行き来する時間旅行もののSFだが、タイムパラドックスの妙味がある訳でも、特殊なルール、規則性による新味がある訳でもなく、時代をまたがって出会った2人という、SFというより、どちらかと言うとファンタジーの世界だった。熊本が舞台ということでは、現代の熊本と江戸時代の熊本の同じ場所が出てくるのが、熊本をよく知っている人にとっては、興味深いのでは?2024/08/21
ざるこ
42
熊本市郊外、広大な日本庭園を有する「百椿庵」に1人暮らす小説家の惇。そこに現れた幽霊と思しき女性は「つばき」と名乗る140年前からのタイムトラベラーだった…。まず、つばきの話し方がとてもしとやかできれい。日本語の美しさを感じる。山頂から見下ろす景色がまったく違っていても140年間変わらず存在する物を見つけた時は感慨深い。2人の初々しい恋と「別れ」の時を迎える寂しさがゆっくりと語られる。決して中身の濃い話ではないけど時間をかけて読みたくなるとても優しい物語。「りょじんさん」の謎が解けたラスト2人の運命は…?2019/06/11
やまねっと
20
ラストにはグッときたが、いまいち読んでて日常の描写が多すぎて読んでてもどかしい気持ちになった。 でも、つばきはとても魅力的なのでそれに引っ張られて全部読めた。相思相愛なので、疑問を持たず読めるが、惇は生活力がないので、こんな感じで幕末を乗り切ることができるのか心配になった。物書きという肩書きしかないからタイムスリップした先での生活を案じてしまう自分がいる。 タイムスリップ以外は大して物語としてのほほんとしているから読んでて退屈なのも確かだ。 長い時間かけて読んでしまった。一気に読むことをお勧めする。2025/12/13
ごんぞう爺さん
18
時間を跳び、出逢う二人。そして時間に引き裂かれる二人。百椿庵に仕掛けられた時間跳躍機によって、運命の出逢いをするつばきと惇のラブストーリー。江戸時代から平成の現代へ跳躍したつばきの凜とした美しさ、違う時代でも生きようとする強さ、江戸の時代で惇を向かえる優しさに素晴らしい人だと思った。むしろ、惇の方があたふたして、いざとなった時の男の情けなさに同性として反省すらしてしまう(笑)梶尾さんお得意のタイムトラベル物であるが、本作は物語の「道具」として「素直に良いなぁ」と思えた。2018/09/22
紅羽
9
最初は緩やかに軽い気持ちで読んでいたのが、次第にどんどん作品世界に引き込まれ、二人がどうなってしまうのか気になり、一気に読んでしまいました。とても良かった。江戸時代からある古屋敷で出会った新人小説家の青年と、現役江戸時代人であるつばき。二人は不思議な力で平成と江戸時代を行き来し、惹かれあっていく。しかしその行き来には「終わり」があって…。二転三転していく二人の運命。ラストまで気を抜けない王道の恋物語でした。2025/04/21
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